
超音波検査の前に「午後の紅茶ミルクティー」を飲むと膵臓癌(すいぞうがん)が発見しやすくなるという発表がされました。
ニュースでも取り上げられていましたが。これを聞いただけでは「どういうこと?」となりますね。
ということで少し詳しく調べてみました。
今回のこの「超音波検査の前に「午後の紅茶ミルクティー」を飲むと膵臓癌(すいぞうがん)が発見しやすくなる」という発表は
「国立がん研究センター」の検診研究部部長である中山富雄氏がPRESIDENT Onlineにて「発見が最も難しい「暗黒の臓器」すい臓がんを劇的に見つけやすくする”あの飲み物”」という記事を執筆しました。
この後にも紹介しますが、その発見者は元大阪国際がんセンター副院長の片山和宏氏です。
目次
・問題は「膵臓(すいぞう)」の位置
・超音波検査(エコー検査)では空気やガスが邪魔になる
・超音波検査に「午後の紅茶ミルクティー」が最適だった
・「午後の紅茶ミルクティー」のおかげで手術後の生存率が劇的に上がった
・【注意】ミルクティーを飲んでも癌の治療や予防にはなりません
問題は「膵臓(すいぞう)」の位置

膵臓癌をはじめとする腹部の臓器を検査する際には「超音波検査」というものが使われます。
妊婦さんのお腹の中にいる赤ちゃんを見ることができる「エコー検査」という呼び方が一般的かもしれません。
”エコー”という名の通り超音波の反響や残響を映像化する機械なので”超音波検査”と言うのですね。
と言うことで超音波を臓器にぶつけることで臓器の姿を映し出すわけですが、問題は”膵臓(すいぞう)の位置”です。

膵臓(すいぞう)の位置は「胃」の裏側、「腸」の奥の背中側に位置します。臓器としてはかなり奥の方にあるためなかなか検査のしにくい臓器で、様々な検査機を使っても”見えにくい”ことから膵臓(すいぞう)は「暗黒の臓器」とも言われます。
それなら背中側から検査すればいいじゃんとも思いますが、話はそう単純ではありません。
超音波検査(エコー検査)では空気やガスが邪魔になる

超音波検査を受ける際、胃の中に食べ物などが入っていてはそれもまた映像に写ってしまいますので臓器の鮮明な形が見えません。
そのため腹部の超音波検査(エコー検査)では検査の前日夜から絶食し「胃」の中身を空っぽにして検査を受けます。
そして、胃を空っぽにすればそこには空気やガスが溜まることになります。
腹部にガスや空気がたまっていると超音波検査の際に超音波の反響などがハレーションという現象を起こしてしまいます。
※ハレーションを一般的にわかりやすい現象で例えると、逆光の写真を撮った時に太陽光が被写体の前に出てきて写真全体が白飛びしてしまうアレです。
腹部に空気やガスの溜まる場所といえば「胃」や「腸」ですよね。そして膵臓(すいぞう)は「胃」と「腸」に囲まれている状態にあり、映像がハレーションを起こしやすく見にくいそうです。
そこで、胃を何かの液体で満たすことで空気を避け超音波検査で映像に映りやすくするという処置が取られます。
その処置というのが、オシッコ我慢して膀胱(ぼうこう)を水分で満たし、検査の1時間前に「水」を1リットルも飲むそうです。(お腹チャプチャプになりますね)
お母さんたちはお子さんがまだお腹の中にいる時、エコー検査でそうした経験をした方が多いようですね。オシッコ我慢してるのに水を1リットルも飲まなきゃいけないんですから結構苦しそう。
超音波検査に「午後の紅茶ミルクティー」が最適だった
今回の発表の発見者である片山和宏氏は「超音波検査の際に胃の中の空気を水分に置き換えてはどうか」という研究を重ねてこられました。
参考記事:【ワイドショー通信簿】午後ティー(ミルクティー)と超音波検査の意外な関係 「モーニングショー」が医師の話を紹介(モーニングショー)
参考記事での片山氏の話によれば胃のなかに貯める水分には適度な濁りが必要だそうです。
様々な飲料で試した結果、レモンティーでは胃酸と反応して邪魔になり炭酸が入っているとその気泡が邪魔になるようで、炭酸もなく適度な濁りのある「午後の紅茶ミルクティー」が最適だということが分かったようです。
この研究結果について「発見が最も難しい「暗黒の臓器」すい臓がんを劇的に見つけやすくする”あの飲み物”」という記事を執筆した中山 富雄氏によれば
おそらく、カギを握るのは乳脂肪分なのでしょう。その比率が絶妙なのが「午後の紅茶 ミルクティー」だということです。(記事から引用)
とのことで、記事を読む限りでは他社のミルクティーやお手製のミルクティーでは「午後の紅茶ミルクティー」ほどの”映りの良さ”は出なかったのではないかと想像されます。
先述の通り超音波検査前は絶食が必要になりますので、検査前に「午後の紅茶ミルクティー」を出された患者さんは嬉しそうにごくごくと飲み干すそうです(笑)
「午後の紅茶ミルクティー」のおかげで手術後の生存率が劇的に上がった

繰り返しになりますが、膵臓(すいぞう)癌は非常に見つけにくいものです。
そもそもどの臓器であれ状態によっては1センチ以下の癌は発見が難しいそうで、
がん細胞が100万個にまで増えてやっと2ミリの大きさになり、約10億個でやっと1センチ。
膵臓癌の場合、癌細胞が1センチにもなると5年後の生存率は8.5%と非常に低く、前立腺癌(99.1%)、乳房癌(92.3%)、胃癌(66.6%)、肺癌(34.9%)に比べても非常に低いのがわかります。(参考:午後ティー(ミルクティー)と超音波検査の意外な関係 「モーニングショー」が医師の話を紹介)
1センチの癌細胞になるまでには10〜20年かかることもあるそうなので、そのため定期的に検査をして早期発見することが非常に重要になるわけですね。
ただでさえ1センチ以下のがん細胞を見つけるのは困難なわけですから「暗黒の臓器」と呼ばれる膵臓(すいぞう)では尚のこと。
今回の「午後の紅茶ミルクティー」を使った超音波検査で膵臓(すいぞう)の映像がこれまでより鮮明に映し出すことができるようになったことで癌(がん)の早期発見できる確率が上がり、
膵臓(すいぞう)癌が発見され手術をした後、5年後の生存率は一般的には30%だったそうですが、検査時に「午後の紅茶ミルクティー」を使用した場合では50%にまで上がりました。
そして医療法人藤原医院のwebサイト【ミルクティーエコーについて】には
最近ミルクティーを350mlから500ml飲んでいただき、胃の中の空気を胃の入り口に追いやることで膵臓が見やすくなる事が分かりました。当院でも「膵臓がんの高リスク」の方を対象に通常の検査の後、ミルクティーを飲用してもらい膵臓を丁寧に検査しています。(引用)
と記載してある通り、研究だけでなく実際の医療現場ですでに取り入れられているようです。
【注意】ミルクティーを飲んでも癌の治療や予防にはなりません
「超音波検査の前に「午後の紅茶ミルクティー」を飲むと膵臓癌(すいぞうがん)が発見しやすくなる」という話が大きく話題になった時に気になったのが
「膵臓癌には午後の紅茶のミルクティーを飲めばいいらしい!」
「ミルクティーを飲むと癌に効くらしい」
「ミルクティーを飲むと癌が見つかる」
と言ったような冗談とも本気とも取れる微妙なSNSの投稿。
記事の内容を読んだり改めてニュースを見たことで
「ああ、ミルクティーで癌が治るわけじゃないのか」
「ミルクティーが癌に直接効果があるんじゃないんだ」
など”勘違い”であることに気がついたという投稿も見られました。
TwitterをはじめとしたSNSは話題なニュースなどが流れるように目に入ってくるため、その話題に触れる機会は多くなるものの、直感的な受け取り方をする方も多く
さらに冗談めいた「ミルクティー買いに行かなきゃ!」「ミルクティー買った!」などの投稿を見ることで”癌の予防になる”であるとか”癌に効く”と言った勘違いを生みやすい土壌であるのは確かです。
今回の発見と発表はあくまでも”検査の直前に飲むことで超音波検査で膵臓癌が発見しやすくなる”ということが大事な部分であり
「ミルクティーを飲む」=「癌の治療」というような直接的な結びつきではありません。
そんな勘違いするわけない。記事をちゃんと読まない人が悪い。と言う意見も理解できますが、
世の中の人の多くはニュースの内容をしっかり聞いたり記事をちゃんと読むと言ったことは”よほど気になる記事”でない限りあまりしないでしょう。私自身もそうです(小声)。
インターネットが普及した現代社会において膨大な量の情報が溢れる中で、センセーショナルに煽るようなタイトルや文言が問題になりながらもその傾向はますます強くなっている印象を受けます。
【「午後の紅茶」が癌の発見を早める】と言うのはとても面白いタイトルです。
私もそれが面白いと思ったからこうして記事にしたわけですが、こうして発信する側もまたそうした勘違いを生まないように気をつけなければいけないなと感じる一件でもありました。
医療技術の発展は私たちの健康な生活にとってとても重要であり、インターネットを通じてこうした最新の情報を受け取れると言うのは良い時代だなと思います。
その反面、自分でしっかりと情報を精査し、見極め、考えることが重要な時代でもあるのだなと感じます。
私自身も医療の専門家ではないので、記事内に”勘違い”を生むような表現があるかもしれません。気になった方はぜひご自身でも調べてみてくださいね。