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不老長寿と癌耐性の鍵を握るハダカデバネズミ

 不老長寿といえば人類最大の夢。そんな長生きしたくないよという方もいらっしゃるかとは思いますが、「生物にはなぜ寿命があるのか」という疑問に答えるためにも不老・長寿の研究は欠かせないものです。

 鶴は千年、亀は万年と長寿の象徴であり縁起物として名高い鶴と亀ですが、鶴の平均寿命はおよそ30年程度、亀に至っても種類によっては100年以上長生きしますが種全体としてはこちらも平均寿命は30年程度だそうです。

 しかしながら動物種によっては老化寿命が無いとされている者たちがおり、その例としては若返りの機能を持つベニクラゲや、高級食材であるロブスターな5続けていると言われているものもありますね。

 そんな中、我々人類と同じ哺乳類の仲間でも不老長寿の研究が行われており、その鍵を握るのが今回紹介するハダカデバネズミです。

目次
ハダカデバネズミの生態
老化の兆候を見せないハダカデバネズミ
癌化耐性を持つハダカデバネズミ
原因は未だ未解明


ハダカデバネズミの生態

 まずはハダカデバネズミの生態から軽く触れておきましょう。

 ハダカデバネズミは読んで字の如くと言うか、見た目がそのまま名前になっていて目立った体毛がなく歯が剥き出しと言う変わった見た目をしているネズミです。

 学名は「Heterocephalus glaber」ですが、この学名すらも「Heterocephalus」は「変な頭」と言う意味ですし「glaber」も「毛のない」と言う意味。学名からして「毛のない変な頭のネズミ」と言うなんとも不憫なお名前です。

 ケニアソマリア周辺のサバンナに棲息し、ご自慢の出っ歯で地下にトンネルを掘ってそこを巣にしています。

 歯で掘ったら口の中が土だらけになりそうですが、剥き出しの出っ歯後ろに唇があり掘った土が口の中に入らないようにしています。

 真っ暗な地中で一生を終えるため目は退化し光を感知できる程度の機能しか持たず、温度変化の少ない地中棲のためか哺乳類としては珍しく体温を調整する機能を持たない変温動物です。

 地下のトンネルは長いものでは全長数キロにもおよび、平均して80頭前後(大きなコロニーでは200頭を超えるものも!)の大きな群れを形成しています。

 また、その生活は哺乳類には極めて珍しい「真社会性」の社会構造を持ちます。「真社会性」とはハチアリなどの昆虫に多く見られる不妊階級を持つ社会で、生殖出産を担当する王と女王外敵と闘う兵士を集めたりトンネルを掘るワーカーなどと言った階級に分かれています。

 ハチアリは基本的に一度の交尾1匹の女王コロニー内の全ての個体産み落としそれら全ての個体遺伝子的に同一の個体となることで「真社会性」を形成しますが、ハダカデバネズミの場合には女王1匹に対して王は3匹ほどおり女王を中心として遺伝子的に極めて近縁ではあるもののハチアリのそれとは異なる部分もあります。

 さてこの生態だけ取ってみてもかなり変わったネズミであり非常に興味深いのですが、今回の話の中心は不老長寿でした。

 ハダカデバネズミがなぜ不老長寿と言われているのか。見ていきましょう。


老化の兆候を見せないハダカデバネズミ

 ハダカデバネズミ研究自体は始まってからまだまだ日が浅く研究機関も少ないのが現状です。研究室の飼育下においても最長寿で30年ほどの個体が観察されるに止まっています。

 同じ哺乳類でもなら100年以上生きているものも観察されているのでハダカデバネズミがたかだか30年生きたところで「不老長寿は言い過ぎでは?」と疑問に思いますが、

 ハダカデバネズミと同程度の大きさである齧歯目のマウス(小型のネズミ)の平均寿命は2〜3年と短く、ラット(大型のネズミ)ですら4年ほど。

 他の種類のネズミに比べて10倍も長生きしていることがわかります。

 また、30年生きているハダカデバネズミ生殖機能を失っておらず活動量心臓拡張機能毛管機能代謝などと言った老化の兆候が現れやすい機能についても衰えておらず、それに加えて加齢に伴う死亡率の上昇も起こりませんでした。

 とは言え、絶対に死なないのではなくあくまで老化の兆候がないと言うこと。

 ストレス歯周病などと言ったことが原因で命を落とす個体も見られるのですが、これらの死因老化と相関性がなく全年齢で起こる疾患でありそう言った観点からも病気や怪我を免れた個体は理論上は不老不死であると推論されているようです。


癌化耐性を持つハダカデバネズミ

 「」つまりは「悪性腫瘍」は体内の細胞が正常なコントロールを受け付けなくなることによって起こる細胞の自律的増殖によって起こります。

 ハダカデバネズミの場合、この癌細胞に対しても強い耐性があることがわかっています。

 通常、マウスは寿命が短く発癌率が高いため癌の研究においてよく実験で使われるのですが、ハダカデバネズミに同じように癌を誘発させるためにガンマ線を打ち込んだり、腫瘍の移植や発癌性物質を与えたりしたものの研究下においてはハダカデバネズミは発癌しませんでした。

 動物園の飼育下においては前癌病変(癌になりやすい細胞の発生)や良性腫瘍の発生は確認されているものの、いずれにしても悪性腫瘍(癌)に対する極めて強い耐性があることは確かでしょう。


原因は未だ未解明

 ここまで話しておいて何なんですが、ハダカデバネズミの不老と癌耐性についての原因はまだわかっていません。

 原因解明に向けて様々な研究・実験が行われており多少手応えもありそうなのですが、決定的な原因の解明に至っていない以上ここでの言及は避けたいと思います。不老長寿って個人的にはなかなかにセンシティブな内容だと思っているのです。

 ただ、ハダカデバネズミの生態とその長寿性はとても興味深いものがあります。

 ハダカデバネズミの研究は始まってからまだ年月が浅く、文中にも述べましたとおり理論上は不老不死である可能性があるものの飼育下で年齢30年ちょっとしか確認されていません。

 そんなこれからまだまだ発見の多いハダカデバネズミの研究ですが、日本国内においては熊本大学大学院生命科学研究部 老化・健康長寿学講座が精力的に取り組まれているようです。

 ハダカデバネズミの可愛い(?)写真もたくさん見られて何だかいろいろ調べているうちに妙な愛着が湧いてきました(笑) 

 私が参考にした論文や記事などは以下に紹介しておりますので興味のある方は是非ぜひご参照ください。


参考文献など
長寿齧歯類ハダカデバネズミを用いた老化研究(PDF)
熊本大学大学院生命科学研究部 老化・健康長寿学講座
Why Do Naked Mole Rats Live So Long?
Life Expectancy: Age is just a number
「ハダカデバネズミ」が、ガンにならない理由
不老不死の鍵を握る哺乳類「ハダカデバネズミ」。老化を見せず生殖も(今のところ)永遠に続ける



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