最近「あつまれ どうぶつの森」がとても話題を集めていますね。私も流行りに乗ってやってみたところ”島クリエイター”が面白すぎてハマってしまいました。
どうぶつの森と言えば言わずと知れた案内役となるキャラクター「たぬきち」がどのシリーズにも出てきまして、その名の通り動物のモデルは”タヌキ”です。
タヌキと言えば大都会東京でもちょっと市街地を離れるだけでその辺の藪の中にいたりする日本ではとてもメジャーな動物ですが、実はこのモデルとなっている”タヌキ”は海外の人々にとってはあまり馴染みの無い動物なのです。
昨今のゲームは基本的に全世界に向けて販売されるため海外でのプレイヤー達ももちろんタヌキの「たぬきち」に案内されるわけですが、馴染みがない故に「”たぬきち”ってなんの動物?」なんて話題になっていたりするくらいなのです。
余談ですが「たぬきち」の英語名は「Tom Nook」で読み方はトム・ヌーク。日本の「タヌキ」とちょっと発音が似せてあって面白いですね。
今回はそんな世界的に希少種(?)なタヌキが海外でどれほど”希少”であるかを裏付けるようなお話をしたいと思います。
目次 ・なんでも食べるタヌキの生態 ・タヌキの生息域は日本をはじめとした極東部 ・日本の動物園とシンガポールの動物園が「タヌキ」と「コビトカバ」を交換 ・動物園の存続を願って
なんでも食べるタヌキの生態
タヌキは哺乳綱食肉目(ネコ目)イヌ科タヌキ属に分類される動物で、草原や藪地を好んで暮らし、夜行性で食性は雑食です。注目すべきは強烈な雑食性ということで、魚や虫などはもちろん、げっ歯類や鳥の肉やその卵、そのほか動物の死骸や果物や葉や茎などなど食べられそうなものはなんでも食べます。
そんななんでもかんでも食べるタヌキは時に畑を荒らしたり民家に入り込んで冷蔵庫を荒らしたりと獣害被害も多数あり、農作物のクズや生ゴミまで食べてしまうことからもその強烈な雑食性がわかります。
ジブリ映画の「平成狸合戦ぽんぽこ」では都市開発により森林が減ったことで野生のタヌキが市街地に出てくるという問題を取り上げたストーリーですね。野生のタヌキが住む場所や食べ物が減ってしまったので人間の住む市街地に出て行ってしまうというのは現実世界でも実際に起こっている問題でもあります。
タヌキの生息域は日本をはじめとした極東部
先述の通り日本では東京ですら野生のタヌキを見られるほど広く、そして多く生息しているタヌキですが、世界中に生息しているわけではありません。
タヌキの生息域は日本、朝鮮半島、中国やロシアの東部などその分布は極東部に集中しています。例外としてドイツやポーランド、北ヨーロッパや西ヨーロッパにも生息していますが、これらは1928年にソ連によって毛皮目的で移入されたものが繁殖したもので在来種ではありません。
そのため海外ではタヌキは極東に住む珍しい動物として扱われており日本人が感じているほどメジャーな存在ではないのです。
とは言え、絶滅が危惧されているほど希少というわけではなくあくまで地理的分布による希少性なので、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト(絶滅の危険度を示す指標)では低リスク中の低リスクである「LC」に分類されています。
日本に住む私たちの感覚としてはグリーンランドやフィンランドに生息するトナカイやオーストラリアに生息するコアラやカンガルーに対する印象のような感じなんでしょうか。そう考えると確かに”珍しい動物”として扱われるのも頷けます。
特に日本に生息するタヌキの多くは「ホンドタヌキ」という日本固有の亜種で本州・九州・四国に生息しており、佐渡島や屋久島などに生息しているものは人為的に移入されたものです。また、北海道に生息しているタヌキは「エゾタヌキ」と呼ばれ、ホンドダヌキの地理的亜種(※)という扱いになっています。
※地理的亜種:生物的に明確な違いはないが、気候や食べ物によって生態が若干変わる。ホンドタヌキは冬眠しないが、エゾダヌキは冬眠をするなど。
こうした地理的な分布の理由から「日本のパンダ」と言ったコメントがあるほど希少とされるタヌキですが、その希少性の価値はどのくらいのものなのでしょうか?
日本の動物園とシンガポールの動物園が「タヌキ」と「コビトカバ」を交換
2010年のこと、日本の旭山動物園(北海道)と久留米市鳥類センター(福岡県)がシンガポール動物園にタヌキの雌雄ペアを贈ったところ”パンダ並みの珍獣”として歓迎式典が開かれ、挙げ句の果てに冷暖房完備の専用宿舎まで用意される騒ぎになりました。日本の動物園ではタヌキって外の檻にけっこう雑に並べられている印象がありますが、冷暖房完備とはすごい待遇ですね。
さらに驚きなのが2013年のこと、日本のいしかわ動物園(石川県)が世界三大珍獣と言われる「コビトカバ」の入手を同じくシンガポール動物園に交渉したところ「タヌキとなら交換していいよ」と言われタヌキ6頭とコビトカバが交換されました。
これがどのくらい価値のあることなのかと言うと、コビトカバは西アフリカに約3000頭ほどしか生息しておらず、先ほどの国際自然保護連合のレッドリストでは「絶滅危惧(EN)」に指定されているほどの希少種なのです。
そうした絶滅危惧種とタヌキ6頭が交換されたわけですから、日本に住む私たちのタヌキに対する印象とはずいぶん違うものだということがわかります。
2013年当時、いしかわ動物園ではオランダの動物園からすでにメスのコビトカバを入手しており、シンガポールからはオスのコビトカバを入手したことから繁殖が可能となりました。これによって2016年12月に繁殖に成功、国内3例目となるコビトカバの赤ちゃんが誕生し、2019年12月には同動物園にて2頭目の赤ちゃんが誕生しています。しかし残念なことにこの2頭目の赤ちゃんは2020年3月に死亡してしまいました……。ちなみに1頭目の赤ちゃんだった「ミライ」くんは2018年に東山動物園(愛知県)に”婿入り”し、現在も繁殖に向けて大切に飼育されています。
動物園の存続を願って
記事内で紹介した、「旭山動物園」「久留米市鳥類センター」「いしかわ動物園」「東山動物園」は新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の影響により現在全て休園中です。各動物園のwebサイトでは休園状況や再開園についての情報はもちろんですが、動物園内の動物の様子が動画で配信されていたりやバーチャルツアーなどをみることができます。
ステイホームが推進されている現時点ではなかなかお出かけできず寂しいですが、こういった動物園の取り組みを見て改めて動物たちに関心を持ち、再開した時にはぜひ実際に足を運びたいものです。
休園中も動物たちは生きています。動物園は来場者の入園料などで成り立っているためその収益がなくなったと言うことは職員さんのお給料だけでなく動物たちの食べ物を買うことも困難になることを意味します。
その影響で世界各国の動物園では”最終手段”として園内の動物を別の動物の餌にすることも検討されていることろもあります。
このような状況の中で私たちにできることは少ないかもしれませんが、コロナ収束に向けてもう少し頑張りましょう。またこの機会に今回紹介した動物園以外にもご自身の住む地域の動物園や植物園、水族館などのwebサイトを見てみてください。普段とは違う動物園や水族館、植物園の一面を見ることで、再開して遊びに行った時に新しい発見の楽しみができるかもしれません。
参照サイト
久留米市鳥類センター
いしかわ動物園
旭山動物園
東山動物園