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内閣府「2050年までに人を身体や時間から解放し、AIと共存する社会を作る」【ムーンショット型研究開発制度】

 昨今話題となることが多いAI技術VR空間関連の技術ですが、2020年1月23日に内閣府が「ムーンショット型研究開発制度」を発表し、総合的な科学技術の発展推進の目標を示しました。

 今回の記事ではその「ムーンショット型研究開発制度」の内容をできるかぎり簡潔に紹介しながら、はたして2050年までに実現可能なのか見てみたいと思います。

目次
・ムーンショットとは?達成すべき6つの目標目標1:人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現目標2:超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現目標3:AIとロボットの共進化により、
      自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現目標4:地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現目標5:未利用の生物機能等のフル活用により、
      地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出目標6:経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる
      誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現さいごに:未来はけっこう近くにある

ムーンショットとは?

 「ムーンショット型研究開発制度」とか「ムーンショット計画」なんて言うとSFアニメや映画のような名称です。カタカナの名称になると途端に非現実的な話に聞こえてしまうのは私だけでしょうか。

 そもそもこの「ムーンショット」という言葉は「実現の困難な計画や目標だが、成功すれば大きな革新をもたらす」という意味合いで使われる言葉です。言葉の出所は、1961年5月にアメリカの第35代大統領ジョン・F・ケネディが「アポロ計画」に関するスピーチで「月へのロケット打ち上げ(ムーンショット)」について言及したことが発端だそうです。

 「アポロ計画」も確かに当時としては困難な目標ではあったでしょうし、大きな損害や尊い命が犠牲となってしまったものの、その成功によって現在の宇宙開発や衛星技術に革新をもたらし、現代の私たちはその恩恵を受けています。

 今回内閣府が発表した「ムーンショット型研究開発制度」でもこのような言い回しになったのは「今はまだ技術的に難しいかもしれないけど時間をかけてでも挑戦し、日本が技術革新をリードして行こう」という意思表示かと思われます。

 さて、そんな”困難な計画”の内容とはどのようなものなのでしょうか。内閣府発表資料から「達成すべき6つの目標」に注目して見てみましょう。


達成すべき6つの目標

 こちらの資料が内閣府発表の「ムーンショット型研究開発制度の概要及び目標について」という資料です。

 この資料によると、下記6項目の達成目標が設定されています。

・目標1:人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現

・目標2:超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現


・目標3:AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現


・目標4:地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現

・目標5:未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出

・目標6:経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現

これらの達成目標を実現することで「人々の幸福の基盤となる社会・環境・経済の諸課題を解決する」ことを最終的な目標にしています。

 それでは次に、これら6つの目標の詳細をひとつひとつ見ていきます。参考資料「ムーンショット型研究開発制度が目指すべき「ムーンショット目標」について(PDF形式:399KB)(内閣府)」と「ムーンショット型研究開発制度の概要(PDF形式:578KB)(内閣府)」から概要をつまみ食い形式で紹介していきます。


目標1:人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現

ムーンショット型研究開発制度の概要 – 内閣府(PDF)

この目標1では
誰もが多様な社会活動に参画できるサイバネティック・アバター基盤
サイバネティック・アバター生活
以上の2項目が具体的な目標に置かれています。

 これだけだとなんのこっちゃって感じですが、イメージとしては遠隔操作可能な高性能ロボットの実現といったところです。「サイバネティックス」とは生理学、機械工学、システム工学の分野を統一的に扱う学問で、そこで作られる物の具体的なイメージとしては「サイボーグ」です。

 つまり、現実社会の中でサイボーグを自分のアバター(分身)として活動できたり活躍できる場を作るということですね。

 自分の体は自宅にありながらサイボークのアバター(分身)出勤してくれたり、誰かに会いに行けたりするような構想です。このような構想は実のところ現時点でも実社会で受け入れられつつあるもので、ロボット技術の発展とともに近い将来実現可能な物かもしれません。

 ビデオ通話などがスマートフォンの普及によっていまや普遍的な技術になり、リモートワークでのオンライン会議オンライン飲み会のような新しい文化もすぐに浸透していくだろうという予感がします。

 外出自粛に伴って自宅でも友達とみんなでお喋りする方法としてこの「オンライン飲み会」が話題となっていますが、今後も離れたところに住む友人や家族と気軽にオンラインでお茶会や飲み会を催す人も多いのではないでしょうか。まさに空間の制約から解放されたコミュニケーションと言えます。

 さらにアバター(分身)としてのロボット開発ももちろん進んでいます。医療・介護・福祉などの場で活躍が期待されているいわゆるコミュニケーションロボットはそのロボットとかんたんな会話をするだけでなく写真を撮ったり誰かとビデオ通話をすることもできます。

 コミュニケーションロボットの多くは自立して移動することはできませんが、例えばソフトバンクグループの「Pepper(ペッパー)」は遠隔操作可能となっており、スマートフォンからアプリを使ってカメラを通した映像を見ながら移動したり会話したりすることが可能です。これはまさにアバター(分身)の先駆けであり、この技術が発展した先には高度な遠隔操作能力を持ったサイボーグによるアバター化が見えてきますね。

 2050年までにどの程度一般化されているかはわかりませんが、現実化されていく過程でいつのまにか社会や生活に浸透している技術のような気がします。


目標2:超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現

ムーンショット型研究開発制度の概要 – 内閣府(PDF)

目標2では
【臓器間の包括的ネットワークの統合的解析を通じて疾患予測・未病評価システムを確立】
【疾患として発症する前の「まだ後戻りできる状態」、すなわち「未病の状態」から健康な状態に引き戻すための方法を確立】
【疾患を引き起こすネットワーク構造を同定し、新たな予測・予防等の方法を確立】
【人の臓器間ネットワークを包括的に解明】
の項目が目標設定されています。

 ここで言われているのは人の体の臓器同士の関連性を解明して行こうという目標です。
 例えばこれまで認知症は脳の機能低下や脳梗塞などの疾病による後遺症と考えられていましたが、軽度の認知症は腸内細菌と関連がある可能性が示唆されています(2019年:軽度認知障害は腸内細菌と関連 – 国立長寿医療研究センター(PDF))。
 このような特定の臓器の研究だけではわからなかった疾病の原因が別の臓器との関連によって引き起こされているかもしれないという構想自体は古くからあり、私自身の馴染み深いところではアーサー・ケストラーの「機械の中の幽霊」で語られる臓器発生のホロン階層秩序などが挙げられるでしょうか。

 症状の観察だけでは難しかった臓器同士の関連性やネットワークは、ビッグデータディープラーニングの活用により人の観察によって得られる以上の関連性が抽出できる可能性があります。ディープラーニングの分野も研究が盛んではあるものの発展途上であるのは確かで、これも2050年時点でどこまで汎用可能な技術になっているのかはわかりませんが、今後の研究と技術の発展によってさまざまな疾病を乗り越えられることに期待したいと思います。


目標3:AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現

目標3では
【人が違和感を持たない、人と同等以上な身体能力をもち、人生に寄り添って一緒に成長するAIロボットを開発】
【自然科学の領域において、自ら思考・行動し、自動的に科学的原理・解法の発見を目指すAIロボットシステムを開発】
【人が活動することが難しい環境で、自律的に判断し、自ら活動し成長するAIロボットを開発】
【特定の状況において人の監督の下で自律的に動作するAIロボットを開発】
以上4項目の目標設定がされています。

この項目が一番SFっぽいですね(笑)
映画「ターミネーター」や「ブレードランナー」のような、人とロボットの区別がつかないほどのAIロボットを実現しようという目標です。区別がつかないとは言ったものの見た目はさておき、ロボット自身の内面的な要素が大きいですね。

 「人が違和感を持たない」というのはどのようなレベルの”違和感”を言うのでしょう。ロボットとしてそこにいて違和感がないのか、人と見紛うほど”生物的”に違和感がないのかによって目指す目標も変わりそうですね。

 ロボットとしての違和感と言うのは、みなさんお持ちのiPhoneに搭載されている「Siri(シリ)」などと話していると会話が噛み合わなかったり、こちらの意図が伝わっていなかったりということが多々あるかと思います。これはロボットとしての違和感ですね。

 生物的な違和感というのはいわゆる「不気味の谷」というものです。人に似せた創作物は人に似せれば似せるほど違和感を人に与えます。なので、先ほど紹介したようなコミュニケーションロボットなどのほとんどはデフォルメされた表情になっており、生物的と言うよりもやはりロボットとしての外見を保ったデザイン設計になっています。

 ただ「人と同等以上な身体能力をもち」という点で見ればやはりそれはロボットとしての役割だと思うので、まずは円滑なコミュニケーションや指示の伝達、行動の受け入れということろに重きを置いているのでしょう。

 ロボットが”自発的、自立的に考える”という感覚は非常に判断が難しいでしょう。これは以前に記事で紹介した「哲学的ゾンビ」や「クオリア問題」とも関連の深いところでありますが、ロボットによるどのような演算を”自立的”と定義するのかが私にはわかりにくく感じます。

 内閣府の参照資料内にある「人と同じ感性」との文言から”自立的に考える”となるといわゆる”感情”を想起してしまいますが、おそらくそうではないのでしょうね。私なりの解釈ではありますが、ロボットとヒトの共生関係を”違和感”なく実現すると言ったところでしょうか。

 そのような社会構造を考えると漫画「ちょびっツ[ CLAMP ]」を思い出すのは私だけでしょうか。ターミネーターやブレードランナーのような人間社会に溶け込むロボットというよりも、「ちょびっツ[ CLAMP ]」の場合は人間とロボットの線引き明確に描かれているなかで人間とロボットとの恋模様を描くと言う挑戦的なストーリだったなと思います。

 はたまた映画「アンドリューNDR114 」のような覚醒したロボットが”自発的”に技術革新を推し進め、ロボット自身が人間の社会にイノベーションを起こしていくような社会構造を想定しているのでしょうか。

 いずれにしてもその技術を享受する私たち一般人はそういったロボットと共生共存する社会に対して心構えをしておかなくてはいけないのかもしれません。


目標4:地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現

ムーンショット型研究開発制度の概要 – 内閣府(PDF)

目標4では【持続可能な資源循環の実現による、地球温暖化問題の解決環境汚染問題の解決】という大きな目標を軸に
【資源循環技術の商業規模のプラントや製品を世界的に普及】
【温温室効果ガスに対する循環技術を開発し、ライフサイクルアセスメントの観点からも有効であることをパイロット規模で確認】
【環境汚染物質を有益な資源に変換もしくは無害化する技術を開発し、パイロット規模または試作品レベルで有効であることを確認】
以上、3つの目標が設定されています。

 地球環境問題というのは非常に難しいですね。そして非常にセンシティブです。再生可能エネルギーが研究開発されることには期待したいですが、だからと言って今すぐに石油燃料や原子力を捨てるわけにも行きません
 資源の無駄遣いを個人レベルで減らしたところで大きな影響はないのかもしれませんが、その個人個人の行動が大きな力となり地球規模の影響になるのもまた事実です。

 そんなセンシティブな環境問題ですが、国レベルで対策できる大きな要素がやはり科学技術の推進です。

 先生可能エネルギーとして風力や潮力発電・太陽光エネルギーなどですが、やはり昨今話題のものといえば核融合炉でしょう。これまでの原子炉である核分裂炉での核分裂反応からエネルギーを得る方法とは違い、核融合炉では読んで字のごとく核融合で生じるエネルギーを得る方法で、ウランやプルトニウムといった放射性物質を用いず水素やヘリウムなどの比較的安全な元素を用いてエネルギーを作り出すことができます。めっちゃ簡単に言うと人工太陽を作ろうと言うものです。

 実はこの核融合炉は日本が世界最先端と言われています。と言うのも、つい先日の2020年3月に核融合炉大型実験装置である磁場封じ込め型核融合実験装置(「JT-60SA」)」が茨城県那珂市に完成したばかりなのです。
 この装置は欧州諸国との相互研究のなかで開発されており、今後も多くの研究成果を多くの国々と共有して安心安全なエネルギー開発を世界的に推し進めてくれることでしょう。
 この装置は核融合で生じるプラズマを安定させるための実験装置なのでこれが稼働したからといってすぐに発電されるわけではありませんが、核融合炉地球環境を守りながら人間の文化文明の発展を推し進めてくれる技術革新であるのには間違いありません。

 空気中の汚染物質を除去や無害化についても、人類は過去に技術開発によりフロンガスの大幅な使用排出の削減を成し遂げていますから、絶望的に悲観することよりもまずは個人レベルでのゴミの削減やリサイクルを意識したいところです。


目標5:未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出

ムーンショット型研究開発制度の概要 – 内閣府(PDF)

目標5では
【微生物や昆虫等の生物機能をフル活用し、完全資源循環型の食料生産システムを開発】
【食料のムダを無くし、健康・環境に配慮した合理的な食料消費を促す解決法を開発】
【上記システムのプロトタイプを開発・実証するとともに、倫理的・法的・社会的(ELSI)な議論を並行的に進めることにより、2050年までにグローバルに普及】
以上の3つの項目が目標設定されています。

 まぁ端的に言うと、普遍的に日常的に虫を食べるようになるんでしょうね。それからコンビニや飲食店から出る食品ロスを減らそうと言うことでしょう。食品ロスを減らすための取り組みは様々ありますし議論の余地もまだまだあります。

 コンビニが賞味期限の近い商品を値下げするようになったのもここ数年のことで、それによって食品ロスを減らすことに成功したようです。これは値下げによる効果ですがそもそも値下げしなきゃいけないくらい作らなきゃいいしその分価格あげれば……とか個人的に思うのですが前述の通り議論の余地があるところでもあるので今回はあまり突っ込むのをやめておきます。

 このような取り組みは社会構造としての取り組みですが、ムーンショット的な技術開発としての食品ロス削減では廃棄する食品を粉末化し、3Dプリンターで最食品化するという構想が提案されています。現在でもクッキーやチョコレートに好きな写真やイラストをプリントする食品用プリンターがありますが、その3D版ですね。
 ドラえもんなどのSF世界でよくある「ピザ作って!」と言えば食用粉末を混ぜ合わせてピザを出力してくれるような未来の道具が本当にできるのかもしれません。なんだかちょっとワクワクします。

 注目すべきは「虫食」ですよね。日本にもイナゴや蜂の子など虫食の文化が無いこともないですが、全国的に一般的ではありません。しかしながらテレビなどのメディアで少しづつですが虫食についての紹介がされたりしていますし、昆虫食の試食会なども最近多くなりました。
 私も揚げた昆虫をお酒のおつまみに買ったことがありますが、食べてみると抵抗なく美味しく食べることができましたし、虫食が一般化するのも案外難しいことでは無いのかも思います。

 また内閣府資料ではAIを用いて土壌の微生物環境を解明し微生物の持つ機能を用いて食料を増産させる取り組みも提案されています。キノコの生産などはすでにそのような環境にあるんじゃないでしょうか。野菜なども水生栽培が可能なものがありますし、土壌の微生物環境の完全解明がなされればより効率的にそして美味しい野菜が狭い空間でも得られるようになるかもしれません。

 医療の発達と長寿化はとても喜ばしいことですが、同時に居住地の確保や食料問題が常に付きまといます。土地の有効活用と安定的な食料生産、そしてロスの削減は人類にとって医療技術と同じくらい重要な課題なんですね。


目標6:経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現

ムーンショット型研究開発制度の概要 – 内閣府(PDF)

目標6では
【大規模化を達成し、誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現】
【一定規模のNISQ量子コンピュータを開発するとともに実効的な量子誤り訂正を実証】
を目標としています。

 ぶっちゃけこれができれば他の目標全部できるんじゃね?と思ってしまうのは素人考えでしょうか。
 量子コンピュータと言うのも最近よく聞く言葉ですね。しかし「誤り耐性型」というのが聞き馴染み無いかもしれません。私もあまり詳しく無いので簡潔に言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、めっちゃ単純に言うと計算時に出てしまうエラーを計算時の時点で訂正しちゃう仕組みって感じです。
まぁ難しいことは置いといて、要するに実用可能な量子コンピュータを開発しましょうってことです。

 量子コンピュータの研究開発はアメリカ、欧州、中国が先を走っており日本はそれを追う形になっているのが現状です。中でも中国は頭一つ抜けてるという印象がありますが、国家の安全戦略に関わる部分でもあるのでそれぞれ各国は現状最先端の研究結果をあまり表に出したく無いようです。

 量子コンピュータが実用化されると今私たちが使っている暗号やパスワードは一瞬にして解かれてしまうと言われています。これに対抗できるのはまた量子コンピュータだけです。

 内閣府の参照資料では「経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる大規模で多用途な量子コンピュータを実現」とありますが、このうち最も重要なのが”安全保障”でしょう。語弊を恐れずに言うと軍事的安全保証です。

 先述の通り、量子コンピュータが実現されれば現行の暗号やパスワードを無効化できるため軍事的政治的機密情報にも簡単にアクセスできてしまう可能性があります。こうした技術をひとつの国が持ってしまったら、それこそ覇権というものです。
 これまでの世界の戦争といえばミサイルや弾丸の飛び交うものでしたが、これからの時代の戦争はサイバー戦争などどいったインターネットやコンピュータ上での情報戦が戦争のあり方とも言われています。いくら大きなミサイルや高性能な武器を持っていても、それを制御するコンピュータが乗っ取られてしまってはどうしようもありません。

 とまぁ、量子コンピュータを悪い方向で使うと怖いものですが所詮は道具です。包丁も人に向ければ危ないですがまな板の上では美味しい料理を作るための道具。研究者の方々に感謝とエールを送りながら、私たちはその使い方を間違わないように世論や世界情勢を平和に保つ努力をしなければなりませんね。

 日本における量子コンピュータ研究も他国を追う形とは言ったものの、世界レベルでいうとやはり先端技術を持っています。最先端の研究結果をあまり他国へ出したく無いという内心はありつつも、各国の企業や大学はその研究結果やハードウェアを融通しあっています。


さいごに:未来はけっこう近くにある

 いかがでしたでしょうか。無謀で困難とも思われる”ムーンショット”を冠した内閣府の「ムーンショット型研究開発制度」。「身体や時間から解放」とか「AIと共存する社会」と言われるとものすごく遠い未来やSFの世界の出来事のように感じられますが、紹介しました通りここで掲げられている”目標”はあくまでも現代技術の発展系でありその一部はすでに実現可能なレベルに達しているとも感じられます。
 それぞれの目標達成年は2030年と2050年に設定されています。いまから10年から30年後です。私は今30代ですので2050年には60歳ですね。30年といえば私が子供の頃には祖父母の家には黒電話がまだありましたが、今やほぼずべての人がスマートフォンを持っています。
 黒電話を使っていた祖父母がスマートフォンを持つ未来を想像していたでしょうか。スマホに話しかけて噛み合わない返答を楽しんでいる今の私には、お手伝いロボットと楽しく会話しながら違和感なく老後を送っている私の姿がちょっとだけ想像できます。

 新しい技術やロボットを開発する力は私にはありませんが、それを使わせてもらうのは私たちです。どんなに革新的な技術がでてきたとしても、人の心は変わらず可能な限り平和的に、正しい方向で、明るい未来を紡いでいきたいものです。


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