コロナ渦、どこかに出掛けるとよく体温チェックをされますね。普段の体調を気遣って毎日体温を計る方も多いかと思います。
部屋の温度を見たり料理をする時には油の温度を計ったりもしますね。
さて、これらのような温度を計る時に使う「温度計」はかの有名なガリレオ・ガリレイが発明した物だと言われています。
今回は人類で初めて室温を計ったガリレオの「空気温度計」と言う発明品のお話です。
ヘロンによる空気の熱膨張の利用
空気が温度の変化によって膨張と収縮するということは小学生の理科で教わることかと思いますが、その発見は紀元前80年にまで遡ります(今から2100年前!)。
古代ギリシャの建築家ウィトルウィウスは、穴の開いた容器に水を満たし、それを熱すると風が放出され、水が沸騰すると激しく風が吹き出すとの記述を残しています。
そしてそのおよそ100年後の紀元1世紀。古代ローマで当時の数学者であったアレクサンドリアのヘロンによって蒸気の力が利用され様々な発明品が生み出されることになります。
中でも有名なのが人類初の「自動販売機」や蒸気機関(蒸気の噴出で物が回転する仕掛け)の先駆けである「アイオロスの球」、そして空気の熱膨張を利用した「自動ドア」の考案です。
ヘロンの発明について詳しくは下記の記事をご覧ください。
ガリレオによる「空気温度計」の発明
ということで、紀元前から紀元数年の頃にはすでに空気の熱膨張は発見されていました。
さてそのおよそ1500年後、かの有名なガリレオ・ガリレイが「空気が熱で膨張するなら、空気の温度を計測できるんじゃね?」ってことで「空気温度計」なるものを作ります。
この「空気温度計」と呼ばれる装置は、温度による空気の膨張と収縮を利用してガラス管に溜まった水が上下します。
作り方はこうです。
めちゃくちゃ単純ですね。
まず細長いフラスコのようなガラス管と水の入ったコップを用意し、細長いフラスコの球になった部分を温めます。
温められると空気は膨張するわけですから、ガラス球の中の空気は膨張して外へ押し出されますね。
次に、暖かい膨張した空気で満たされた細長いフラスコを逆さにして、管の先っぽを水に浸します。
細長いフラスコを熱するのをやめると、その水や周りの空気の温度差により細長いフラスコは冷やされ今度はフラスコ内の空気は収縮します。
すると、フラスコの内と外の空気の温度が同じになるまで細い管から水が吸い上げられていきます。
内外の空気の温度が同じになればフラスコ内の空気の収縮は止まり、水の吸い上げも同時に止まります。
吸い上げられた水の位置がその時点での室温の目安となり、「空気温度計」の完成です。
ガリレオ自身はこの発明を「そんなん当たり前やん」てな感じですごい発明だとは思っていなかったらしい。
うーん。偉大な発明家というのはやはり一般人とは感覚が違うのであるな。
空気温度計が動く仕組み
完成した「空気温度計」がどのように動くかを見てみましょう。
「空気温度計」を作った時点よりも室温が上がった場合、空気は膨張するので逆さになったフラスコ内部の空気が膨らみ、細い管に溜まった水を押し下げます。
この時、もちろんフラスコの周囲の空気も膨張しているのですが、周囲の空気は膨らんでもその膨らみは外へ外へと逃されるので空気圧は変化しません。(これはあくまでフラスコ内に対してです。)
しかし、フラスコ内部で膨張した空気は細い管からしか逃げられません。そのため空気圧となって水を押し下げることができるのです。
基準としたい室温の水の位置に線や点を書いておけば、その基準とした室温から室温が下がったのか上がったのかが見て取れますね。
注意したいのが、温度が上がると水は下がり、温度が下がると水が上がるという私たちが普段使っている温度計とは動きが逆であるという点です。
■空気温度計は体温の変化も見ることができた
この空気温度計ではどこでも使える温度の基準を作ることはできません。あくまで制作されたその場所のその時の温度を基準にして得られる上下だけです。
他の場所で違う大きさの装置を作っても、何センチ下がったから何度だということは言えませんでした。あくまでも温度変化を見ることしかできません。
しかしこの性質を利用して医学的に体温を計ることが考案されました。
空気温度計の仕組みが世に出回った当時のイタリアの医学者サントリオはこの空気温度計のガラス球部分に患者の手を当て、具合が悪い患者の体温が健常時よりも上がっていることを突き止め、後の医学研究に貢献しました。
普段よく見る温度計と仕組みは同じ
普段私たちが見る赤い液体の温度計は灯油などの油、銀色のヤツは水銀です。
これらには温度を計るための素材として液体が使われているため「空気温度計」に対して「液体温度計」と呼ばれます。
それらの液体が温度によって膨張や収縮することで目盛りを上下しています。液体温度計では空気温度計のような周囲の空気圧はあまり関係ありません。そのため実は密閉されていなくても目盛りを上下します。
密閉することで内部に空気圧を作り、ひっくり返したり横向けでも使える便利な温度計にしているだけです。
たまに温度計の中で赤い液体が途中で分かれちゃって使えなくなってしまうこともありますね。あれは中の密閉された空気が液体側に入り込んでしまっている状態です。
要はガリレオの空気温度計も私たちが普段使う温度計も温度の変化によって物が膨張したり収縮したりする現象を利用して温度を計っているのです。
最近よく見る「放射温度計」の仕組み
コロナ渦において最近よく見かける「ガンタイプ温度計」。額や手首に向けてピッとするだけでものの数秒で体温が測れて便利ですね。
この俗に言う「ガンタイプ温度計」は「空気温度計」や「液体温度計」とは仕組みが全く異なります。
「ガンタイプ温度計」は「空気温度計」に対すれば「放射温度計」と呼ばれる物で、物体から放射される電磁波(より具体的には「赤外線」や「可視光線」)を熱エネルギーとして計測する装置です。
温度を持つ全ての物体はその表面から電磁波を放射しています。その温度によって電磁波のエネルギー量が変わり、逆に言えばそのエネルギー量がわかれば物体の温度がわかります。
この仕組みを利用して、体から放出される電磁波のエネルギー量を捉え体温を計測している物が「放射温度計」です。
なんかピッて言う音からしてあの装置から何かが出ているような印象を受けますが、実は”何か”を出しているのは人間の側の方で、その”何か”と言うのは「電磁波(赤外線など)」のことだったんです。
放射された電磁波のエネルギーをどのように受け取り計測するかも大きく分けて「熱型赤外線センサ」と「量子型赤外線センサ」とあるのですが、まぁ話が外れすぎるのでまたの機会にしましょう。
「ガリレオ温度計」とはちょっと違う
お洒落な雑貨店やロフトや東急ハンズなんかでもよく見る「ガリレオ温度計」と言うこの雑貨。
この「ガリレオ温度計」は17世紀にイタリアの科学学会である「アカデミア・デル・チメント」の構成員たち(学者や技師)によって作られた物で、その構造原理がガリレオの発見した「液体の密度は温度に比例して変化する」と言う原理に由来しているため「ガリレオ温度計」と名付けられました。
ですので空気の膨張率を用いた「空気温度計」と、液体の密度変化を用いた「ガリレオ温度計」ではその構造が少し違います。
まぁ熱による膨張と言う点では近い物ではありますが、構造は結構違うのです。
「ガリレオ温度計」では密閉されたガラス管内の”液体”が温度によって密度を変えることで中に浮かぶ球体が浮き沈みします。
液体は密度が変わることで物を浮かす力(浮力)が変化するので、温度変化(=密度の変化)によって中のカラフルな球体が浮き沈みします。
いろいろカラフルな液体の入った球体ですが、あの液体は特別な物ではなく本体に入っている液体と同じ液体で、ここで大切なのは球体自体の重さです。
温度が変われば密度が変わり、そして浮力が変わるわけですから、球体はその重さに応じて浮く物と沈む物が分かれます。
「10℃の時に浮く重さ」「30℃の時に浮く重さ」とそれぞれに特定の重さを与えられているため、それが浮いた時に(または沈んだ時に)ガラス管内の液体の温度が得られます。
室内に一定時間以上放置されている「ガリレオ温度計」のガラス管内の液体の温度は室温と同じになるため、そこで提示された温度がすなわち室温と言えるわけです。