古典物理学の中でニュートンは光は粒子だと言い、ホイヘンスは光は波だと言いました。
その150年後にトーマス・ヤングが「ヤングの実験」において「光は波である」と実験的に証明したのですが、
マクスウェルやヘルツらによって電磁波についての研究が進み、光が電磁波の一種であることが判明します。
また、ベクレルが光を金属板に照射すると電気が流れる「光起電力効果」を発見
その後の「光電効果」の研究により光が波の性質のみを持っていると説明できない現象が起き「光の波動説」が揺らぐこととなっていきます。
そこでプランクは波の性質を持ちながら粒子として振舞うことのできる「量子仮説」を提唱し、後の量子論確立の創始者の一人となります。
そしてその後、アインシュタインによって「光量子仮説」が提唱され、量子論が本格的に幕を開けます。
量子論の確立には多くの科学分野と科学者・研究者が登場するのですが、今回は主にトーマス・ヤングとマックス・プランク、そしてアインシュタインの3人をメインにして量子論幕開けまでをずらっと解説していきます。
目次
・「ヤングの実験」
・光電効果
・量子仮説とプランク定数
・アインシュタインの光量子仮説
−光子(フォトン)
−量子ってなに?
−プランク定数っていくつ?
・電子も量子だった:電子線回折
・あくまでも粒子性であり粒子そのものではない
・二重スリット実験
「ヤングの実験」
「ヤングの実験」は光の波の性質を観察する上で基本となる実験ですのでまずはこちらを簡単に紹介しましょう。
19世紀初頭(1805年頃)、トーマス・ヤングという科学者が研究していた当時はニュートンの「光の粒子説」とホイヘンスの「光の波動説」が対立していた真っ只中。
しかもニュートンは当時から権威ある科学者でしたので「光の粒子説」の方が多くの支持を得ていました。
その論争に終止符を打つべく実験的に波なのか粒子なのかを観察するためにトーマス・ヤングが行ったのが通称「ヤングの実験」です。
光を2つのスリットに通した時に光がどのようにスクリーンへ映るかを観察すると、光の形が縞模様になることから光が波の性質を持つことが示されました。
なぜ縞模様になると波だと言えるのかと言うと、
この上の図のように光の波が干渉しあって光の強い部分と弱い部分ができるためスクリーンには縞々の光に写ると言うわけです。
仮に光が粒子であったならこのようなことは起きず、2つのスリットを通った光はスクリーンに2本の光の線を映し出すだけのはずです。
しかし、実際に行われたヤングの実験では縞々の光の模様が現れます。これによってヤングの実験により光は波であると言えたわけです。
「ヤングの実験」について詳しく知りたい方は是非こちらの記事をご覧ください。
「ヤングの実験」以降、しばらくは光は波であるとする「光の波動説」が優勢でした。
光電効果
ヤングの実験から少し時代を飛ばしましておよそ30年後。
この頃には電気と磁気の相互作用を示す「電磁誘導」発見され、それに伴って「電磁気学」が発展します。
この電磁気学の基礎となる方程式「マクスウェルの方程式」から電磁場は波として記述できることがわかり「電磁波」の発見に繋がります。
その電磁波は光と同じ速度で進む(光速)ということから光も電磁波の一種であることが発見されました。
そして電磁波も水や音のような波は物を動かしたりする波のエネルギーを持っているだろうと考えられました。
電磁波の持つエネルギーを研究するにあたり、光をある金属板に当てるとその光の持つエネルギーによって電子が飛び出してくるという現象が確認されます。
これを「光電効果」と言います。
金属のなかには「自由電子」と呼ばれる金属の原子結合内を比較的自由に動き回れる電子がたくさん存在します。
この自由電子が存在することで金属は電気が流れるという性質を持ちます。
自由電子は普段は金属原子内にある原子核からの引き付ける力によって金属物質内に閉じ込められていますが、紫外線などの周波数の高い光が当たるとそのエネルギーを受け取り金属物質内から自由電子が飛び出てきます。
ここで飛び出してきた電子を「光電子」と呼んだりしますが、本質的には電子と変わりありません。
ここまでが光電効果の簡単な仕組みです。
この光電効果のなかで重要な現象の発見が3つあります。
①光を照射される物質によって一定以上大きな振動数でないと電子が飛び出してこない。
②振動数の大きな光を当てると飛び出してくる電子のスピード(運動エネルギー)は変わるが電子の数に変化はない。
③強い光(振幅の大きい光)を当てるとより多くの電子が飛び出してくるが電子の運動エネルギーに変化はない。
光を普通の波だと捉えるのであれば波の振幅をおおきく(明るい光)して長時間照射すればそれだけたくさんの電子がと飛び出してくると考えられたのですが
実際にはどれだけ長時間放射しても一定数以上の数の電子が飛び出してくることがありませんでした。
そこで、まずは光の波の振幅(可視光線で言う明るさ)だけを大きくしてみるとどうなるかを見てみます。
予測としては振幅が大きくなった分だけエネルギーが大きくなると考えられたため、飛び出してくる電子の運動エネルギー(飛び出てくるスピード)が大きくなると予測されるのですが、なんと飛び出してくる電子の数だけが増えたのです。
次に光の振動数だけを変えてみます。
この場合の予測としては、波の数が増える訳ですからそれだけ多くの電子が飛び出してくると考えられました。
しかしまたもや予測は外れ、実際の実験では電子の飛び出してくる運動エネルギーだけが増えて、一定数の電子が飛び出してからはいくら長時間光を当て続けても数が増えないのです。
これによって光をはじめとした電磁波のエネルギーは振幅ではなく振動数(波長)に起因するのではないかと考えられました。
水のような物理的な波であれば振幅が小さくても何度も何度も波を当てれ続ければいくつでも物を動かすことができますが、
光の波の場合にはたくさんの電子を動かすためには大きな波が必要で、振幅が小さくなっていくとある時点でまったく電子が飛び出さなくなるのです。
そして電子の飛び出す数や、そもそも飛び出すのか飛び出さないのかについては振動数はまったく関係がなかったのです。
厳密には紫外線以下の振動数では光電効果は起きないため振動数がまったく関係ないと言うわけではないのですが、
ここでの話はあくまで光電効果が起きた上での話ですので話を単純化させるために詳細を割愛しておきます。(具体的には金属から光電子を発生させるには紫外線以上の振動数が必要となります)
ともあれ、「光電効果」のこのような実験結果から「光って普通の波とは性質が違うんじゃない?」という疑惑が出てきたのですが、当時19世記の物理学(古典物理学)では全くの謎でした。
量子仮説とプランク定数
さてそんな「光電効果」の謎に科学者たちが唸っていた同じころの19世紀後半。光の波動性に関連して光電効果とはまったく別の研究が進められていました。
このころドイツでは製鉄業が盛んで、もっと科学的な視点から良質の鉄を作る研究をしようという研究が行われます。
良質の鉄を作るには熱せられて溶けた熱の温度管理が非常に重要だったのですが、当時の一般的な温度計では鉄の融解温度である1500℃という高温を計ることが出来ず、職人の感覚に頼らざるを得ませんでした。
そこでドイツの科学者たちは、熱した鉄から出てくる光の色や強さから温度を測ろうという「放射輝度と温度の関係」について研究を行います。
放射輝度を簡単に説明すると、温度を持つ物質から放出される色のスペクトル(放出されるさまざまな周波数)とスペクトルごとの明るさ(振幅の大きさ)から、その物質が持つ温度を計算しようというものです。
この放射輝度による温度の計算は現在では太陽や遠く離れた星の光からそれらの表面温度を計算するときなどにも用いられています。
プランクの量子仮説
熱した鉄から発せられる光の色や明るさから温度を求めようとした「放射輝度」の研究で、まず「ヴィーンの変異則」と「レイリー・ジーンズの法則」がそれぞれ提唱されます。
それらの法則はそれぞれ特定の周波数帯域では色と温度の関係性をうまく説明できていたものの、その周波数帯を外れると実測値とは異なる結果を出してしまうようなものでした。
「ヴィーンの変異則」と「レイリー・ジーンズの法則」はそれぞれ部分的に合っているが、部分的に間違っていたのです。
そこで、これらふたつの法則のいいとこ取りをして合体させたような理論をマックス・プランクが提唱します。
ここからちょーっとだけ難しくなるのでゆっくり行きましょう。
プランクは光のエネルギーの放出(熱した鉄の光など)や吸収(太陽光で物が温まるなど)は電磁波の振動数(ν)に対して得られる「hν」を単位として起こると仮定し
またその仮定に加えて放射のエネルギーの総量は整数倍の値しかとることができないとさらに仮定することで実測値に合致する計算式を組み立てました。
この仮説により急に出てきた「h」が後に「プランク定数」と言われるものです。
この仮説と計算式で登場する「hν」が何を意味するのか、当時の科学者もプランク自身もわかっていなかったのですが、
計算した値と実測値とがみごとに一致しているということで、その計算式はとりあえず正しいとされ「プランクの法則」として世に送り出されます。
しかし、エネルギーの量(hν)が整数倍であるということに当時の科学者もプランク自身も納得がいきませんでした。
なぜならば、光をはじめとした電磁波は”波”であるはずなのですから、そのエネルギー量が増えるときには連続的な変動(たとえば0.1倍や0.01倍ずつ増やせるなどといった切れ目のない変化)でなければならないはずです。
それなのに、整数倍という飛び飛びの数値として算出され、しかもその値が実測値としても当てはまるのです。
プランクの法則は実測値と非常によく合致し、それは正しいものだと受け入れられた一方で、
しかし、エネルギーに基本単位のようなものがありその数が整数倍であるということについては当時の科学者たちも悩まされました。
プランクも光の波動説派であったため、整数倍というとびとびの値をとる「hν」が何を意味するものなのかすら解明できないままにこれらの功績で1918年にノーベル賞を受賞しています。
現在ではこれから紹介するアインシュタインの光量子仮説により振動数(ν)にプランク定数(h)を掛けた「hν」はエネルギーの最小単位(基本単位)であるとして「エネルギー量子」と呼ばれ、これらのプランクの仮説をまとめて「プランクの量子仮説」と言います。
アインシュタインの光量子仮説
光電効果の実験に加えて、プランクの方程式を知ったかの有名なアインシュタインは
1905年に「光電効果」で言われていた光のエネルギーと「プランクの方程式」で用いられた「エネルギー量子(hν)」って同じものじゃない?と発想し、
プランクによる「エネルギー量子」の考え方を基礎にして「光量子仮説」を提唱します。
「光量子仮説」はこの「hν」をいっそのこと光のエネルギーを粒子として扱えばいいんじゃないかという当時としては革新的な視点であり、この功績で1921年にノーベル賞を受賞します。
光子(フォトン)
アインシュタインが光の粒子性に目をつけたことで、光電効果で起こっていた摩訶不思議な光の波の性質を説明することができました。
光電効果についてもう一度その内容を思い出すと、
①光を照射される物質によって一定以上大きな振動数でないと電子が飛び出してこない。
②振動数の大きな光を当てると飛び出してくる電子のスピード(運動エネルギー)は変わるが電子の数に変化はない。
③強い光(振幅の大きい光)を当てるとより多くの電子が飛び出してくるが電子の運動エネルギーに変化はない。
この光電効果に見られる現象の「1:光を照射される物質によって一定以上大きな振動数でないと電子が飛び出してこない。」について、
アインンシュタインは電子を飛び出させるための光の最小のエネルギー(ε)を1つのエネルギー単位とて光の粒子性を提唱しました。
その光電効果を発生させる振動数(周波数)が可視光線程度の高い振動数(短波)からであったため、それら粒子のように整数倍で数えられるエネルギーの量を「光子」または「光量子」と名付けました(またの名を「フォトン」と言う)。
そして、光子のエネルギー量はプランクの法則からプランク定数と振動数の掛け合わせによって算出されるエネルギーを持つ”基本単位”として捉えるので以下のような式で表されます。
光量子のエネルギー=ε
振動数=ν
プランク定数=h
ε=hν
この式から算出される数値がある特定の光の周波数が持つエネルギーの最小単位(基本単位)であると言えます。
「h」は先程紹介した「プランク定数」です。
「ε」は最小のエネルギーのことを指します。「ν」は振動数(つまりその電磁波が持つ周波数)です。
ある特定の振動数「ν」に対して単純にプランク定数を掛けた値「hν」がエネルギーの基本単位(最小単位)であるという式になります。
そのエネルギーの最小単位が「エネルギー量子(ε)」であり、「エネルギー量子(ε)」の集まりとなる「エネルギーの総量(Ε)」がとる値は整数倍であることがプランクの法則からわかっているので以下の式を書くことができます。
1,2,3,4,…=n(整数)
エネルギーの総量=Ε(=nε)
振動数=ν
プランク定数=h
Ε=nhν
これにより、ある特定の周波数がとりえるエネルギーの最小単位(ε)の総量(Ε)はその整数倍にとびとびの値として算出されることとなります。
これが光量子論における光のエネルギーの粒子的な振る舞いです。
これらの計算式により「プランク定数」はエネルギー量を計算するための比例定数(※)となります。
※「比例定数」とはy=2xなどの比例式における「2」のこと。
ある特定の振動数「ν」のエネルギーの総量「Ε」は比例定数である「h」に比例し整数倍の値をとるという式ですね。
ここでややこしいのが「ε」と「Ε」かと思います。
「ε」はある特定の周波数(h)の持つエネルギーの基本単位であり、周波数は連続的に変化することができるのでこの値も連続的に変化します。
「Ε」は「ε」が複数集まったときの総量であり、基本単位である「ε」は整数倍にしかされないためエネルギーの総量となる「Ε」は飛び飛びの値をとるのです。
ここでまたまた光電効果での現象を見てみます。
①光を照射される物質によって一定以上大きな振動数でないと電子が飛び出してこない。
②振動数の大きな光を当てると飛び出してくる電子のスピード(運動エネルギー)は変わるが電子の数に変化はない。
③強い光(振幅の大きい光)を当てるとより多くの電子が飛び出してくるが電子の運動エネルギーに変化はない。
「①」について考えることで光のエネルギーが粒子のように数えることのできるものだとわかったところで、
「②」と「③」についてはどうでしょう。
振幅の大きな光(明るい光)だとたくさんの電子が飛び出してくるという現象も
光の振動数(周波数)を高くすると、その光がどんなに暗くても電子のスピード(運動エネルギー)が増えるという現象も
波の性質としては一見矛盾しているように見えますが、粒子的な振る舞いとしてとらえると納得のいく現象になります。
光のエネルギーを粒子として見た場合、光の明るさが暗いというのは光の粒が少ないということであり、光子が1つと数えられるときにそれを「ε=hν」と表すことができます。
光の波形を見たとき、振幅の大きさは光の強さ(明るさ)ですので、光の波が持つ振幅の大きさは光子の量と言い換えることが可能です。
振幅が大きければ大きいほどたくさんの光子(フォトン)が含まれているので、光電効果では振幅の大きな光(明るく見える光)を照射するとそれだけたくさんの電子が飛び出してくるのです。
たくさんのボール(電子)を複数個弾くには、それ相応のたくさんのボール(光子)を当てる必要があり、弾き出すボールを遠くに飛ばそうとするならより強く早いボールを投げなければならないのと同じです。
振動数の側に立って言えば振動数こそがエネルギーの源であり、その周波数が持つエネルギーが電子の運動エネルギーとして置換されるため振動数が高ければ高いほど飛び出してくる電子の運動エネルギーを高めることができます。
また、光子ひとつ分のエネルギーは特定の物質の自由電子ひとつを弾き出すだけのエネルギーしか持たないため、振幅が一定であればいくら長時間放射しても一定数以上の電子は出てきません。同じ物体に対してであれば放射する場所を変えても同じです。
繰り返しになりますが、飛び出してくる電子の量は振幅が持つ光子の量によって決まるため、どんなに周波数を高くしても電子の数は増えなかったわけです。
このようにアインシュタインの「光量子仮説」は、ある特定の振動数(h)を持つ光の波の振幅は光子の量であり「Ε=nhν」という整数倍の個数でしかエネルギーを放射・吸収できないということを説明することができました。
光電効果を産み出すような周波数の高い光は紫外線以上となるため目には見えませんが、私たちが普段目にしている光も可視光線という光の束です。
エネルギー量子として粒子的な性質を持ちそのエネルギーは整数倍になるとびとびの値なのですが、その明るさって連続的に見えますよね。
しかし可視光線の場合にもやはりエネルギー量はとびとびの値です。
周波数が持つエネルギーの基礎単位は数字にすると極めて小さな値で、その数が整数倍にちょっとずつ増えたところで私たちの目には感知できないレベル(そもそも光子が目に見えないほど小さい)なので連続的な変化に見えるのです。
量子ってなに?
連続的な値であれば「1.111倍、1.112倍、1.113倍」と言ったように小数点以下でいくらでも分割のできる値を取れてしまいます。
対して、整数倍というのは「1倍、2倍、3倍……10倍、11倍」と言ったように整数で増えていく倍数だということです。
整数倍ですから「1倍」を半分にした「0.5倍」やちょっと小さい「0.9倍」といった倍数の値はとらないので「1倍」としたその数値が光のエネルギーの最小単位ということが言えます。
このようにプランクは波が整数倍によって飛び飛びのエネルギー値をとる単位的な性質を持っている、つまり極めて小さな粒のような性質を持っているのではないかと仮定し、アインシュタインが光量子仮説によって理論的な説明を付け加えたのでした。
小さな粒と言えば分子や原子と言った物質的な粒が浮かびます。
これら分子や原子はがたくさん集まって大きな物体となります。その大きな物体を分子や原子としてひとつひとつ数える事ができるため「子」の集まりということで「分子」「原子」と「子」が付いているとイメージしてください。
プランクはエネルギーの量にもひとつひとつ数えられる「基本単位」として粒のように数えられると提唱したわけですから、
大きな量のエネルギーにはひとつひとつ分解して数えられる単位がある。
すなわち「量」に対して「子」として扱えるエネルギーの単位があるということ。
そのため「量子」という名が使われます。
「量子」は英語で「quantum」と書きますが、語源は「quantity」で「具体的にはかれる量」のことを意味します。
英語では同じく「量」を意味する単語で「amount」がありますが、こちらは「抽象的な量」のことを指します。
この意味において具体的に数値化できる量としての「quantity」の方が使われているというのが「量子」という言葉のミソかもしれませんね。
余談ですが、「量子論」は「波と粒の”両方”だから”量子論”なんでしょ」という勘違いをたまに聞きますが、そもそも字が違いますね。
プランク定数っていくつ?
プランクの法則や光量子仮説で使われていた「プランク定数」の正確な数値は長らく曖昧な数値だったのですが、つい最近の2019年5月20日に「6.62607015×10−34 J s」と国際単位系により定義付けられました。(めっちゃ最近!)
これにより重さを測るkg(キログラム)単位の重さが変わったのですが、この話も面白いのでまた別の記事に書くとします。
プランク定数の「6.62607015×10−34 J s」と言う数値をいちいち書いていられないので、プランクの提唱した数式に則って今でもそのまま記号「h」で表されます。
電子も量子だった:電子線回折
アインシュタインが光量子仮説でノーベル賞をとってからわずか5年後、フランスのルイ・ド・ブロイが「波と粒子の性質を両方持っているのは光だけじゃないかも」という「ド・ブロイの仮説」をたてます。
ド・ブロイの仮説は粒子だと考えられていた物質の波動性について予測したもので、「波だと考えられていた光が粒子的な振る舞いをする」ということの逆転の発想です。
この仮説によりこれまで粒子だと考えられていた「電子」が着目され、ド・ブロイによる予測から3年後にはクリントン・デイヴィソンとレスター・マイジャーによる電子ビームの照射実験によって「電子回折」という電子の波動性が確認されました。
回折とは波が障害物にぶつかるとその物体の裏側にまで波が回り込むことを言い、光については「ヤングの実験」よりも以前から光の波動性を示唆するものとして観測されていましたが、これと同じことが電子にも起こったのです。
粒子だと思われていた電子が実は光子と同じように波の性質も持っていたという結果にそれまでの物理学(古典物理学)は根底からひっくり返りかけました。
電子が波だって!?じゃぁ原子や分子は?それも波みたいに振る舞うだって!?分子の集合体である目の前のマグカップも波なのか!?ちんぷんかんぷん!
でも大丈夫。量子論的な波動性と粒子性をどちらも持っているといういわゆる重ね合わせの状態は非常に小さな小さな世界での話です。
私たちが普段ボールを投げたり物を落としたりしたときの物理現象はニュートンたちの時代の古典物理学(いわゆる「ニュートン力学」)で十分に適用可能です。
マグカップも波の集まりであるというのも物体を素粒子レベルで分解してこその話であって、目の前に見えているそれが急にうねうねと波打ったりはしません。
ものすごーく小さな世界では物体や物質はどのように存在しているのか。
それを解明しようとするのが量子論であり、量子力学なのです。
あくまでも粒子性であり粒子そのものではない
アインシュタインによって光のエネルギーの粒子性が定式化され、光電効果を始めとするさまざまな実験の結果からはそれを受け入れざるを得ません。
しかし、それはあくまでも”粒子性”を持つということであって、普段私たちが手に取ることのできる砂粒のような粒子そのものではないということに注意が必要です。
光子の最小単位である「ε=hν」は最小のエネルギー単位として”1粒分だけ”照射することができますが、同時に波であるため1粒分を長時間照射することができます。
こうして光が粒子性を持ち、また電子にも回折をはじめとした波としての性質があることがド・ブロイの予測から証明されたことで「ヤングの実験」をもう一度やり直してみようという実験が考案されます。
みんな大好き「二重スリット実験」です。
二重スリット実験
光が粒子的な振る舞いを持ち、電子が波としての性質を持つということが実験的にも理論的にも示されてきたところで「ヤングの実験」に立ち返った実験が考案されます。
それがあの「二重スリット実験」です。
ヤングの実験では光の束をそのままスリットに通しスクリーンへと照射しましたが、波動性を確かめられた「ヤングの実験」を粒子性のある光子や電子で一粒ずつ発射したらどうなるの?という実験です。
スクリーンには1粒ずつの電子がどこにぶつかったかが映し出されます。
その結果は驚くべきもので、電子を一粒ずつスリットを通して発射するとスクリーンには干渉縞が浮かび上がったのです。
注目すべきは1粒ずつの発射なのにも関わらず”何か別の波”に干渉しているかのような振る舞いをしているということ。
そこで科学者たちは「スリットのどちらを通っているのか見てみよう」ということでスリットのそれぞれに検知器を仕掛けます。
もしかしたらスリットを抜ける直前で波に変わって2つのスリットを同時に抜けているのでは?などいろいろと予測されるなか
1粒の電子は2つのスリットのうちどちらか片方を50%の確立で通る軌道でスクリーンにぶつかりました。
やっぱり電子はスリットを通るときも粒子だった。
が、しかし!
どちらのスリットを通るかを確かめるためにスリットに検知器を置いたとたん、スクリーンには干渉縞が出てこなくなったのです。
電子の通り道に2つのスリットを立てたとき、その電子がどこにあるかを観察しようとすると、
到達点であるスクリーン上では波の性質である干渉縞が出るのに対し、通過点であるスリットで観測すると干渉縞が消えて粒子のように振る舞う。
これこそまさに波動性と粒子性の重なりあった状態という意味不明な量子の特性です。
この量子論の不思議な世界を垣間見せてくる「二重スリット実験」をどのように解釈すべきなのでしょうか……。
「二重スリット実験」の解釈問題については今後別の記事にまとめたいと思います。
参考web
光量子仮説と光電効果・コンプトン効果
光量子仮説と相対性理論―アインシュタインはどのように考えただろうか?ー
エネルギー量子の発見
エネルギー量子
光電効果と光量子仮説
量子化学
光電効果 Photoelectric effect と アインシュタインの「光の量子化」
量子ってなんなの!?(PDFが開きます)
黒体放射(PDFが開きます)
光の正体を探ろう!~量子の世界への招待~(PDFが開きます)
他、各用語のウィキペディアより