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鬼の居ぬ間に踊らにゃ損々

2024.06
[SIZE] 397mmx306mm(額含)
[MATERIAL] Ballpoint pen , Silver leaf

人は己の中に鬼を飼う。欲望を抑え込み、自身を律し、己を監視するもう一人の自分が内側にある。その鬼はいつも自分自身を恫喝し、己に厳しくあれと一挙手一投足に口出しする。

そんな鬼の振る舞いに苛立ち、他の誰かが自由気ままに振る舞うのを見て妬み羨むこともあるだろう。この沸々と湧いてくる一種の負の感情は誰に向けられることもなく、どこへ発散することも出来ず、ただひたすらに悶々としたまま生きている。

何かのきっかけで己の中の鬼を押さえ込むことのできる機会があるのなら、その角を隠して踊り出してみるのもええじゃないか。

鬼の掌の上で踊らされるくらいなら、地に足つけて踊らにゃ損々。次第に鬼も踊り出す。

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情報餓者

2024.04
[SIZE] 391mmx467mm(額含)
[MATERIAL] Ballpoint pen , Silver leaf

情報過多と云われる現代社会に於いてそれを貪り食う情報餓者たち。彼らにとって重要なのは質より量であり、同時にコスパとタイパである。そのような暴食は消化不良を起こすまでもなく垂れ流されて血肉に成らずにより飢える。

作品のモチーフとなっているのは山東京伝の読本『善知安方忠義伝』での一幕を描いた歌川国芳の「相馬の古内裏」である。「平将門の乱」によって廃屋になった屋敷で将門の遺児である良門と滝夜叉姫が妖術を用いて蜂起を企てる。それを知った源頼信の家臣である大宅太郎光国は彼らの妖怪を退治しその陰謀を阻止する。

『善知安方忠義伝』では複数の骸骨が大宅太郎光圀に襲い掛かるが、そのシーンを歌川国芳は一体の大きな骸骨として描いた。国芳がこれを描いたとき、同時代にオランダから輸入された医学書「ターヘル・アナトミア」の翻訳本である「解体新書」を参考にしたとされている。

この歌川国芳による図像は、昭和中期に児童書に創作された「餓者髑髏(がしゃどくろ)」の図像として多く引用されることになる。現代においては「餓者髑髏(がしゃどくろ)」の紹介として国芳の作品が紹介されることも多く、図像が持つ本来の意味は形骸化して文字通り血肉を失いつつある。

私が今これを描く時、「餓者髑髏」として形骸化した図像を流用しつつ、現代医学をベースとした写実的な骸骨を描くことで、情報が大量消費される社会への風刺と共にその情報を活用することで自身の血肉とする試みである。

『善知安方忠義伝』についての文献は原作を読まずにインターネットで情報を収集し、人の骨格を描く際にもインターネットで無料で利用できる医学系の3Dモデルを使用した。この工程は私の血肉になっていると言えるだろうか。否、私もまた大きな髑髏の一部なのである。

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溺れる者は久しからず

2023.05
[SIZE] 575mmx455mm(額含)
[MATERIAL] Ballpoint pen , Silver leaf

どうにもならないような気がして、どうにかなるようにと足掻く。泳ぎ方なんて知らなくても良い。格好悪く不恰好にジタバタしている様を見せつけてやれ。努力の方向性だとか才能の使い方だとか、そんなことを考える前にまず足掻け。沼にはまって藻掻いてみるのだ。そのうち藁にでも手が届くかもしれない。

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2023.05
[SIZE] 489mmx489mm(額含)
[MATERIAL] Ballpoint pen , Silver leaf

もう少し、もう少し手を伸ばせば届きそうなところに在るのに。近づけば近づくほどに遠ざかっていくような感覚。行手を阻むものは何か。私の目を曇らせているのは何者か。

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胡蝶は月夜の夢を見るか

2022.06
[SIZE] 437mmx315mm
[MATERIAL] Ballpoint pen , Silver leaf

中国戦国時代の思想家である荘子(そうし)の「胡蝶の夢」という逸話から着想を得た作品。胡蝶となってひらひらと飛ぶ夢を見た荘子は、果たして自分は蝶になった夢を見たのか、それとも今ここにいる自分が蝶の夢であるのかと問うた逸話である。

 道教の始祖の一人とされる荘子の思想は、仏教で言うところの「空」の概念に近く、人の感ずるところの美醜からその生死まで人が目の当たりにする物事はただ見せかけであると説く。

 主に東アジアで説かれるような”空”的な概念を私たちは頭のどこかで知りながら、それでも何かを感じ考える。

 私が夜空の月を眺める時、胡蝶は昼寝でもしているのだろうか、と。

当作品の部分写真。蝶の羽の中に絵柄が浮き出るようになっている。

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激浪の夜明け

2022.05
[SIZE] 361mmx516mm
[MATERIAL] Ballpoint pen , Silver leaf

良きにつけ悪しきにつけ、夜中の考え事というのはどうにも過激になりがちだ。一晩中ぐるぐると思考が渦を巻き寄せては返す。気がつけば空が白み始め眩い太陽が暗闇を照らす。斯くして陽光と私の間には依然として激浪が渦巻いたまま暗く影を落とすのだ。

葛飾北斎作「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」から着想を得た作品。

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月夜を抱えて

2022.05
[SIZE] 271mmx220mm(額含)
[MATERIAL] Ballpoint pen , Silver leaf

月に手が届きそうな夜がある。とても明るく大きな月は周囲の星々の存在を掻き消して夜空に鎮座する。

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復活と豊穣

2022.05
[SIZE] 223mmx197mm(額含)
[MATERIAL] Ballpoint pen , Silver leaf

復活祭(イースター)では卵は「復活」と「豊穣」のシンボルとされる。日本においても初卵や大寒卵といったように吉兆の象徴とされる。

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自己防衛のすゝめ

2022.04
[SIZE] 344mmx280mm
フレームサイズ:465mm×389mm
[MATERIAL] Ballpoint pen , Silver leaf

自己防衛とは、ただやさしき言葉を知り、解し難き啓発を読み、自虐を楽しみ、生傷を作るなど、世上に実のなき生き様を言うにあらず。

 自分の身を守る方法をいくら知っていても、それを実践してこその自己防衛である。自分を守る方法を知り、自分自身を守ってこそ生き抜けるのだと思う。

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想い思う夜が重すぎて

2021.07
[SIZE] 168mmx168mm(額含)
[MATERIAL] Ballpoint pen , Silver leaf

夜というのは何と寂しいものだろう。あんなにも多くの星々が輝く中で凛として佇む月はなぜあんなにも孤独な存在に見えるのだろう。否。月よ、君はたぶん孤独など感じてはいないのだろう。そうだ、孤独を感じているのは……。

 私は一体誰と話して居るのか。月が私に語りかけるわけでもなし。妄想だけが膨らんで、不安感だけが押し寄せる。

 こんな様子ではチェシャ猫に笑われて当然だ。