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タイプライター?金床?大砲!?:おもしろ楽器クラシック音楽3選

 クラシック音楽で使われている楽器はトランペットやバイオリンなど一般的によく知られている楽器が使われており、誰もが一度は聞いたことがあるかとは思います。しかし、普段からクラシック音楽を聞いていると言うとなんだか高尚な音楽趣味というか取っ付きにくと感じている人も少なくないかもしれません。

 そんな堅物イメージなクラシック音楽ですが、実はけっこうロックでコミカルなことをやっていたりします。今回は様々な楽器を使うクラシック音楽の中でも、一般的にはあまり楽器として使わないものをオーケストラの中に入れて演奏するロックな曲を3曲紹介したいと思います。

 目次から気になる楽器(?)があれば見てみてくださいね。

目次
・タイプライター:ルロイ・アンダーソン作「タイプライター」金床:ヨーゼフ・シュトラウス「鍛冶屋のポルカ」大砲:ピョートル・チャイコフスキー「序曲1812年」

タイプライター:ルロイ・アンダーソン作「タイプライター」


 変な楽器を使うクラシック音楽といえばコレというくらい言わずと知れたルロイ・アンダーソン作曲の「The Typewriter(タイプライター)」。クラシック音楽のジャンルにはあるものの作曲は1950年とけっこう近代の曲です。1950年代と言えば第二次世界大戦直後、欧米の白人社会とくに白人中流階級にとっては繁栄の時代にあります。

 貧困格差や人種差別がまだまだ色濃く残る時代ですが、白人中流階級の人々もまたのんべんだらりと暮らせるわけではなく、大きなビルのオフィスで毎日せっせとタイプライターを叩いていました。

 そんな時代背景の中で生まれたアンダーソン作曲の「タイプライター」は軽快なリズムとメロディに乗せて実物のタイプライターが楽器として使われます。タイプライターを叩く音、ベルの音、レバーの操作音など様々な音が音楽に乗せて演奏されます。

 タイプライター演奏者は手が疲れた演技指揮者を上司に見立てて書類を提出したりなどコミカルな表現も多く、せかせかと忙しいながらも好調な経済に対する高揚感に溢れたオフィスの様子が表現されています。


金床:ヨーゼフ・シュトラウス「鍛冶屋のポルカ」


 1969年に作曲されたヨーゼフ・シュトラウスによる「鍛冶屋のポルカ」では「金床」が用いられます。この曲は金庫メーカーであるドイツのヴェルトハイム商会が耐火金庫2万個の製造を記念して舞踏会と花火大会を行った際に、ヴェルトハイム商会の依頼で作曲されました。

 ヨーゼフ・シュトラウスは作曲依頼を受け、金庫を製造した鍛治職人に敬意を評して打楽器に「金床」を用いることにしました。おめでたい舞踏会や花火大会の雰囲気にぴったりの軽快な曲になっており、その曲中で鍛冶屋に扮した演奏者が実際にハンマー(金槌)で金床を叩くことでカンカンと音を出し、鉄工所から聞こえてくる作業音を再現しています。

 上記に紹介した動画では曲中で汗をぬぐったりジュースを飲んだりサンドイッチを食べたりコミカルな演技も多く、ルロイ・アンダーソン作曲の「タイプライター」に並んで変な楽器を使うクラシック音楽の代表格です。


大砲:ピョートル・チャイコフスキー「序曲1812年」


 1880年に作曲されたチャイコフスキーによる「序曲1812年」では演奏中になんと「大砲」が使われます。その性質上実物の大砲を使った演奏は各国の軍隊や日本では自衛隊で演奏されますが、コンサートホールなどではバスドラムなどで代用されます。

 「序曲1812年」は5部構成から成っており、「大砲」が登場するのは第5部から。上記の紹介動画では8分ごろから使われ始め、曲の最後では大砲が連射されます。クラシック音楽は生演奏がやはり良いとは言いますが、この曲ほど生演奏聞いてみたいと思う曲もなかなかありませんね(笑)

 この曲はナポレオンがロシア遠征をした時の様子を表現したものです。ナポレオンによるロシアへの行軍は、最初はナポレオンが辛勝していたもののその寒さからどんどんと衰弱していき最後には後退を余儀なくされました。チャイコフスキーはロシアの作曲家ですから、この時の様子を雄大にかっこよく作曲しているわけです。曲中で使用される大砲の音は祝砲ということですね。

 この曲は1881年に開催予定のロシアの産業博覧会のためにチャイコフスキーへ依頼されました。そんな大事な作曲を依頼されたチャイコフスキーですが、報酬や依頼の内容に関して不満が多く最初はその依頼を突っぱねます。しかし紆余曲折ありながらもなんだかんだ半年ほどで曲を完成させ、いよいよ博覧会で演奏お披露目かと思いきやその博覧会が開かれず、一旦はお蔵入り。

 その後、チャイコフスキー自身はなんとか演奏してもらおうと何度か演奏依頼を出してみるもののなかなか実現せず、一年後のモスクワ芸術産業博覧会の主催するコンサートでやっと初演されました。この初演時に大砲が使われたかについては意見が分かれており、正確なことはわかっていません。


 いかがでしたでしょうか?いままでクラシック音楽に興味がなかった方も、何から聴けば良いかわからなかったという方も、こういった視点でクラシック音楽に触れてみるのもありかもしれません。

 クラシックでは他にも木槌など様々な日用品(?)が楽器として登場するる曲があります。気になった方はぜひクラシック音楽を聞くきっかけにしてみてください。


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