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【ドレイクの方程式】未知との遭遇:宇宙人が存在する確率を求めよ

 スティーブン・スピルバーグが監督した映画「未知との遭遇」が公開されたのが1977年。それから半世紀経った今も私たちは”未知との遭遇”を果たせていません。宇宙人っていると思いますか?私はいると思っています。ただお互いに電話したり直接会ったりすることは難しいのではないかと考えています。でもちょっとは宇宙人との交流を期待していたりもするんです。今回はそんなお話。

目次
観測可能な宇宙の広さ
水の存在とハビタブルゾーン
宇宙人がいる確率:ドレイクの方程式
最も近い恒星「プロキシマケンタウリ」
会えないのなら電話しよう!
同時代に生きているか
宇宙からの信号を受信!「Wow! シグナル」
観測可能な銀河は2兆個もある

観測可能な宇宙の広さ

 宇宙の広さと言えばヒトの感覚の範囲で言えば無限に広がっているイメージですが、一応の”宇宙の果て”はあるようです。しかし、私たちヒトはその宇宙の果てまで行ったことはありませんし観測すらできていません。宇宙の果てはどうなっているのか、そして宇宙の外側には一体何があるのか、小学生くらいのときにこんなことを考えていて夜も眠れなくなるという経験のある方も少なくないでしょう。私もそうでした。

 今現代の最先端の科学を用いて世界中の多くの研究者が星空の向こう側に拡がる広大な宇宙を観察していますが宇宙の果てにたどり着くのはまだまだ難しい問題のようです。

 しかしならが、我々人類の持つ科学技術でもけっこう遠くの宇宙まで観測することができています。方法としては宇宙からやってくる光を観測するだけなので超巨大な望遠鏡でめちゃくちゃ遠くを見ていると言えばいいでしょうか。その距離なんとなんと465億光年!キロメートルの距離にすると399兆2396億6974万9700km!ぜんぜんピンと来ません(笑)

 地球からみることのできる距離が465億光年ですから、地球を中心にして直径930億光年の球状の宇宙空間を観測できているということです。ただ、あくまでも光学的な観測値ですので、光が届くまでに単純に465億年かかっているわけですから今もそこにあるわけではありません。あくまでも地球を中心として観測した空間の光学的な位置です。

 宇宙の大きさや年齢などなど様々な説があり、我々のような一般人が見てどれが正しいのかなんてわかりませんので、まぁそんなに詳しいことは気にせずとりあえずはこの直径930億光年の宇宙の中で”宇宙人”に出会うことができるのかを考察していきましょう。


水の存在とハビタブルゾーン

 生命が誕生するには液体の水が必要であるということ自体には諸説あります。そのうえ地球の生命が誕生した過程や経緯すらわかっていないので、生命の誕生に水が必須であるとは言い切れませんが一般論として”水の存在”が”生命の存在”の可能性を高めるとは言えるようです。

 幸い、私たちの住む地球には14億k㎥の水が存在していると言われています。これまたピンとこない数字ですが、何はともあれ水というものは私たちの基準とする生物とっては欠かせない物です。類の火星移住計画や宇宙コロニー居住計画でも第一に問題になるのは生命活動の維持に欠かせない水をどのようにして調達するかということです。

 そもそもこの地球に液体の水が存在しているということ自体がけっこう奇跡的なことだったりします。地球は見ての通り、水を地表に保持するために十分な重力を持っており、太陽との距離も適度に保たれているため水が全て凍ってしまったり蒸発してしまったりしていません。

 この地球のように、水を液体の状態で保つことができ且つ生物にとって適温である領域を「ハビタブルゾーン」と言います。しかし、このハビタブルゾーンに星があるから生命が存在しているというわけではありません。あくまでも”生命に必要な水が存在できる領域”という意味です。

 また、このハビタブルゾーンは恒星(太陽)との距離だけに限られたものではありません。木星の衛星である「エウロパ」は木星軌道を回るときにその潮汐力でエウロパ自身が変形し、その摩擦熱で水が存在可能な温度となっています。ただしエウロパの場合は表面は氷で覆われており、その氷の下に液体の水があるのだそうです。

 地球のような恒星(太陽)のハピタブルゾーン内に存在している惑星や、エウロパのように恒星の熱とは別の条件で水が存在しているような惑星(衛星)のことを「ハピタブルプラネット」とも呼ぶそうです。

 地球外の生命体が水を必要とする生物なのかという疑問はあるかもしれませんが、あくまでも私たち人類が知る限りでの生命のあり方が基準となっていてその他の可能性はとりあえず除外されています。地球外生命体を探そうとするとき”生命にとって水が必要でなかったとしたら”という仮定に頼るよりも”我々の知る生命は水を必要としている”という事実を基準に探したほうが見当がつけやすいですしね。


宇宙人がいる確率:ドレイクの方程式

 宇宙人は本当にいるのか、きっとこの広い宇宙のどこかにはいるはずだ。だって宇宙は無限に広いんだもの。可能性は無限大なんだ!というのもロマンがあって好きですが、どうせならもうちょっとだけ現実的な可能性を探ってみます。

 1961年、この宇宙に地球外の知的生命体が存在するかを算出しようとしたフランク・ドレイクという天文学者がいました。彼は宇宙人が私たちとコンタクトを取る可能性を算術的に求めようとします。より正確には「私たちの住む銀河系の中に、人類と通信できる可能性のある地球外の文明の数」を推定する計算式を作りました。その式とは以下のようなものです。

 計算式だけをみても全然意味わかんないですね。このドレイクの方程式は紹介されている記事や書籍などによって表記が多少異なりますが、方程式の意味はほとんど同じですので今回はお馴染みのwikipediaからその式とパラメータを引用しています。

 各パラメータの意味は以下のようなものになります。

人類がいる銀河系の中で1年間に誕生する星(恒星)の数
ひとつの恒星が惑星系を持つ割合(確率)
生命の存在が可能となる状態の惑星において、生命が実際に発生する割合(確率)
発生した生命が知的なレベルまで進化する割合(確率)
知的なレベルになった生命体が星間通信を行う割合
知的生命体による技術文明が通信をする状態にある期間(技術文明の存続期間)

 うーん、パッと見てどうやってそんなもの算出するんだって思いませんか。それもそのはず、これらのパラメータは期待値や推定値で各々ある程度は勝手に操作できてしまううえ正確な数字も答えもないので非常にボンヤリとしたイメージしか浮かびません。ドレイクの方程式とは名ばかりでいわゆる数学で言う所の「方程式」ではないのです。

 ただ、1961年当時の推定値とはいえ当時の研究者がそれぞれに数字を入れてみたところN(私たちの住む銀河系の中に、人類と通信できる可能性のある地球外の文明の数)が1以上になることが多かったため地球外知的生命体探査を行う大きな動機づけとなったようです。

  非常に楽観的な研究者の試算ではNの値が8万だとする極端な例もあったりするので余計に信憑性が薄らぎますね(笑)


最も近い恒星「プロキシマケンタウリ」

 ドレイクの方程式で「私たちの住む銀河系の中に、人類と通信できる可能性のある地球外の文明の数」が少なくとも一つ以上はあるんだろうという推定がされましたが、もしその一つが地球に一番近い場所にあったとしたらどのくらいの距離にあるのでしょうか。

 太陽系に一番近くにある恒星は「プロキシマケンタウリ」という星です。2016年にこのプロキシマケンタウリのハピタブルゾーン内で公転する惑星が発見されました。その名も「プロキシマケンタウリb」。名付けテキトーか!と言いたくもなりますが、慣習的なルールによって名付けられているので仕方ありません。「それなら”a”もあるのか?」とも思うのですが、特定の天体を回る惑星を名付けるときその天体の名前に「b」を付けるということが決まっていて、複数個ある場合は発見順に「b、c、d、……」と続きます。中心になっている天体が「a」っていう認識なんですね。

 閑話休題、「プロキシマケンタウリb」には液体の水の存在が期待されていますが現在のところ正確なことはわかりません。惑星の大きさや質量も正確なことはわかっていませんが少なくとも地球の1.27倍から大きくても地球の3倍程度だそうです。ただ、プロキシマケンタウリから紫外線やX線フレアなどの影響を強く受けている可能性が高く私たちが思うような生物の存在の可能性は低いかもしれません。このような地球に似た特徴をもっていると思われる惑星をスーパーアースと言ったりします。

 紫外線の影響や大気の状態に不安があったとしても、ちょっと楽観的にでも生物がいるんじゃないかと考えたくなるのがなんと言っても太陽系から一番近い場所にあるということ。その距離なんと4.2光年。私たちが光の速さで移動することができれば4年とちょっとで辿りつくことができます。

 とは言え光の速さを時速にすると時速10億8000万kmというとてつもない速さ。人類至上一番スピードの速い人工物は1976年に打ち上げられた太陽探査機ヘリオス2号が時速24万km、2018年に打ち上げられた宇宙探査機パーカー・ソーラー・プローブの最終到達速度が時速72万kmに達する見込みとされています。パーカー・ソーラー・プローブの最速見込みでも光の速さの1/1500ほどにしかなりません。

 仮に私たちがこのパーカー・ソーラー・プローブに乗ってプロキシマケンタウリbに行くとするとざっと6400年ほどかかります。一般的に言われている人間の一世代は30年とされていますからおよそ210世代くらい後の子孫がやっととうちゃくします。長い旅路の中での世代交代で本来の目的すら忘れられてそうなくらい時間がかかりますね。(桁が大きすぎて計算があってるのかわかんなくなったのはナイショ)

 とりあえず今の私たちが「プロキシマケンタウリb」に辿り着くことはできなさそうです。


会えないのなら電話しよう!

 いきなり思春期の恋人たちのようなこと言いましたが、私の宇宙人に対するロマンは思春期の頃からあまり変わってません。会いに行くのに数千年かかるのであればせめて通信することはできないのか。

 地上からはるか上空を回る人工衛星や地球から超遠距離を旅する宇宙探査機との通信は”電磁波”を使っています。光は電磁波の一種ですから電磁波の進む速度も光速(時速10億8000万km)です。

 2010年に感動的な地球帰還を果たした小惑星探査機「はやぶさ」との通信ももちろん電磁波によるものでした。「はやぶさ」が調査した「イトカワ」という小惑星は地球から約3億km離れており、イトカワ到着後のはやぶさとの通信にかかる時間は片道おおよそ16分ほど。はやぶさから送られてくる信号を受け取るのにさらに16分かかるので、はやぶさとの電話は「もしもし?」「はい、もしもし」というやりとりすら30分を超えます。

 では仮に地球に一番近いスーパーアースのプロキシマケンタウリbに通信可能な知的生命体がいたとして電磁波で電話をしたらどうなるでしょう。

 プロキシマケンタウリbまでの距離は4.2光年ですから、一度のやりとりに約8年ちょっとかかりますね。うーん、まぁ現実的といえば現実的な時間ですね。プロキシマケンタウリb星人と遠距離恋愛するには相当の忍耐力が必要そうですが、直接行くのに6400年かかると思えば8年越しの返答くらいなら待てそうです。


同時代に生きているか

 ロキシマケンタウリb星人との通信(電話)に8年という時間がかかるとはいえちょっとだけ現実味を帯びていますが、問題は向こう側に通信可能な文明が”今”存在しているかが大きな問題となります。

 ドレイクの方程式で「通信可能な文明の数の可能性」を算出していますが、その方程式の中にある最後の「L」のパラメータは「知的生命体による技術文明が通信をする状態にある期間」となっています。この期間を長くするか短くするかで「通信可能な文明の数の可能性」が大幅に変わってきます。

 私たち人類による電磁波の最初の発見は1888年のハインリヒ・ヘルツによるものでした。電磁波の周波数に「ヘルツ」の単位がつけられたのは彼の名前に由来します。そして電磁波を用いて通信をはじめたのが1895年、グリエルモ・マルコーニが無線電信を開発したことが最初でした。

 その後、ラジオやテレビなどが開発され人工衛星との通信や携帯電話の普及へと急速な発展をしてきた電磁波の歴史ですが、その期間はわずか130年程度。私たち人類は電磁波を使い始めてまだ130年しか経っていないのです。

 宇宙空間との通信に限っていえば、人工衛星との最初の通信は1958年のスコア衛星から送られたアイゼンハワー大統領のクリスマスメッセージの送受信が世界初です。まだ100年も経っていません。

 宇宙全体の歴史からいえば非常に短い期間です。地球の年齢ですら46億年と言われていますからその短さたるやほとんど一瞬みたいなものです。この広大な宇宙の歴史のなかで、ほんの一瞬の期間の間に宇宙空間を通信可能な知的文明が同時に存在している可能性はとても低いように感じられます。

 長い宇宙の歴史の中で私たち以外の知的文明が生まれた可能性は非常に高いとは思います。なにせ宇宙の年齢は138億歳と言われ、宇宙には無数の星々があるわけですし、現に私たち人間のような生命も生まれているので可能性はゼロではありません。

 ただしかし、その文明が今も続いているとは限りません。生命の絶滅の可能性や惑星自体の寿命もありますから同時期に生まれて同時代を生きているという可能性となるとちょっと楽観的に考えても難しいかなと思います。

 いや、宇宙人の寿命は永遠のように長く技術力は我々の想像を遥かに超えているんだ。という話も多々ありますが、やはり私たちがその超高度文明の宇宙人と通信できることが目標である以上は130年という期間はあまりにも短いのかもしれません。


宇宙からの信号を受信!「Wow! シグナル」

  宇宙人との通信は人類の技術的な期間を考えると難しいだろうとお話ししましたが、実は宇宙から特異な信号を受信したという記録があります。それが「Wow!シグナル」です。

 1977年にアメリカのパーキンズ天文台に設置されていた「ビッグイヤー」という電場望遠鏡が宇宙空間から強い信号を受信しました。この強い信号を観測した学者がプリントアウトした信号部分に「Wow!」と書き足したことから「Wow!シグナル」と呼ばれるようになりました。

 その信号が知的生命体から発せられたメーセージかもしれないということで大きな話題となり多くの議論が行われました。結論から言ってしまうと2017年には彗星が横切った時に発生した信号である可能性が高いという結果が出てしまいちょっとロマンが薄らいでしまいました。それでも確実な結論ではないので今のところは未解決の案件として今でもよく話題に上がります。


観測可能な銀河は2兆個もある

 ここまでは私たちの住む「天の川銀河」の中の話が中心でしたが、この宇宙には私たちが観測できる範囲だけでも2兆個あると言われています。「天の川銀河」の中だけでも知的文明が存在する可能性があるのですから、この2兆個の銀河の中に知的文明が存在する可能性となれば大いに期待が高まります。

 天の川銀河に一番近い銀河は「アンドロメダ銀河」で、その距離はおよそ250万光年ほど。”ほど”とは言ったもののめちゃくちゃ遠いですが、この「アンドロメダ銀河」はどんどん「天の川銀河」に近づいてきています。

 約40億年後には「アンドロメダ銀河」と「天の川銀河」は衝突して最終的には合体すると言われています。衝突といっても星と星の距離は数光年離れているので星々がぶつかり合うわけではありません。ほとんどがすり抜けるようにして通り過ぎて行きますが、引力の影響を受けて一つの銀河になる予測がされています。

 もしアンドロメダ銀河に知的文明があれば接触できる可能性があるかもしれません!と言いたいところですが、40億年後には太陽が大きく膨らみ地球は現在の生物が生活できる環境では無くなっています。「宇宙戦艦ヤマト」でも作って地球から逃げ出さない限り地球の文明は終わっています

 もし地球外の宇宙人たちが私たちよりも高度な文明を持っているのなら、地球消滅の前にぜひ私たちを助けてほしいものです。高度な文明を持つ宇宙人にとって、私たち人類は助けるに値する価値のある存在なのか。ちょっと不安になりますが、人類が清く正しく美しく生きていくことができているのなら正義の宇宙人が助けてくれるのかもしれません。

 庵野秀明監督の「シン・ウルトラマン」楽しみにしています。(その前にいよいよ6月公開のエヴァンゲリオンですけどね!)


参考記事
ハビタブルゾーンってどこなの?
ハビタブルゾーンとハビタブルプラネット
アンドロメダ銀河と天の川銀河が衝突…40億年後の夜空はこう見える
ハビタブルゾーンに地球ほどの系外惑星発見 NASA
太陽系に最も近い恒星に地球サイズの惑星を発見


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